4.6万年の仮死状態から覚めた「線虫」 研究者が感じた衝撃と意義

市野塊

 シベリアの永久凍土で4万6千年間、仮死状態で過ごしたとみられる線虫が動き出したと、ドイツやロシアなどの研究チームが発表した。水や酸素がなかったり、極端な温度にさらされたりする環境に対し、仮死状態になることで耐える生物はクマムシやワムシなどがいるが、今回の線虫の仮死状態ははるかに長いという。

 研究チームによると、この線虫は全長1ミリ程度で、ロシアのシベリア北東のコリマ川の永久凍土で見つかった。新種と判断し、「パナグロライムス・コリマエンシス」と名付けたという。

 発見時、線虫は代謝が検出できない仮死状態「クリプトビオシス」だった。独マックス・プランク分子細胞生物学・遺伝学研究所のテイムラス・カーツカリア教授は「シャーレの上で復活した線虫を見た時は、信じられない驚きと衝撃だった」と話す。

 また、この線虫は単為生殖で増え、100世代以上の繁殖に成功したという。

 発見の意義について、カーツカリア教授は「これほど長期間も仮死状態でとどまることができることがわかった」と説明。研究を進めることで、ヒトの細胞の長期保存のヒントになる可能性もあるという。

 ただ、「仮死状態になるのに必要な遺伝子をすべて特定するには、さらに多くの調査が必要で、ヒトの細胞に使う目標はまだかなり遠い」と指摘。さらに仮死状態を制御するためには「工学的にさらに高度な技術が必要となる」と話す。

 オンライン科学誌プロス・ジェネティックスに論文(https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1010798別ウインドウで開きます)が掲載された。(市野塊)…

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