育て絶滅危惧種のゲンゴロウ 鴨川シーワールド繁殖始め10余年

堤恭太
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 千葉県鴨川市の鴨川シーワールド(SW)で、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に選定されている水生昆虫シャープゲンゴロウモドキ」(関東型)の繁殖が行われ、これまで2千匹を育てて自然に戻すなどしてきた。この水生昆虫は里山の良好な水辺環境を代表する種で、かつては県内にも広く分布していた。SWは水生動物を飼育するノウハウを生かし、房総半島生物多様性の維持に取り組む。

 シャープゲンゴロウモドキは、体長3センチほどの大型のゲンゴロウで関東型と関西型がある。絶滅したと考えられていたが、1984年に千葉県内の数カ所で再発見された。現在の生息地は2カ所だけとなっている。関西型は関東型の再発見後に日本海側数カ所で見つかった。

 県は2008年、SWなどがメンバーの保全協議会を立ち上げ、SWは10年から繁殖を始めた。11年には種の保存法の国内希少野生動植物種に指定されて捕獲や譲渡などが禁止となり、県が回復計画を策定している。

 SWの繁殖事業は6匹から始まった。その最大の課題はエサの確保。幼虫の餌となる生きたオタマジャクシは1日3~5匹が必要となる。

 農薬が散布された環境で育ったオタマジャクシでは幼虫が死んでしまう。SWはカエルを捕まえ、農薬が使われていない場所で産卵させ、エサを確保した。

 担当の森一行さんは「シャープゲンゴロウモドキよりもエサを飼っているようなもんです。魚の方が飼育が簡単かも」と笑う。

 共食いもするため、幼虫は一匹ずつ個別のケースに入れて育てなければならない。成虫は系統ごとに背中に識別記号をマーキングして個体群を維持した。苦労が実り順調に増えていたが、3年目に全滅した。成虫の栄養状態が悪く、生まれた幼虫が育たなかったためだった。

 失敗も教訓にして安定的に繁殖できるようになり、19年からは生息地へ放流も始めた。ただ、シャープゲンゴロウモドキが生息するには湧き水があり、水質汚染がないといった良好な水辺環境などが必要不可欠。残された2カ所の生息地のうち、1カ所は土砂崩れなどで生息できる環境が崩れてしまった。里山として人の手が入らなくなり荒れたのが原因だった。そのため森さんらは、休耕田を整備して新たな生息地をつくった。

 ただ生息地で安定して繁殖するには、いくつものハードルがある。近年の夏の高温も大敵。外来種アメリカザリガニなどの外敵も多い。根源的な問題として、少ない数で繁殖を繰り返しているため子孫の生存率などが低下する危険もある。

 森さんは「放流したシャープゲンゴロウモドキが増えて、あっちでもこっちでも見られるようになったらうれしい」と話す。

 シャープゲンゴロウモドキは、SWの「エコアクアローム」にある「外房の里山―生物多様性の保全―」のコーナーで展示されている。

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