第1回いらだつ軍人、抵抗する学校 8月6日、動員された8千人の子たちは

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 「行って参ります」

 13歳の森本幸恵(さちえ)さんはその朝、元気に家を出て、広島市中心部に向かった。

 建物を取り壊して空襲時の延焼を防ぐ「建物疎開」の作業に、同級生らと動員されていた。

 午前8時に休憩になったので友だちと座っていると、しばらくして周囲が騒ぎ出した。

 「落下傘が三つ」

 「きれいきれい」

 「自分も見よう」。1歩前に出て、上を向いた瞬間。

 ぴかりと光った。

 原爆投下時、米軍は爆発の威力を測定する装置も落下傘に付けて投下していた。

 幸恵さんは寺の門の下敷きに。はい出すと、周囲の友だちは目の玉が飛び出し、頭の髪や服が焼け、口々に叫んでいた。

 「お父ちゃん助けて」

 「お母ちゃん助けて」

 「先生助けて」

 その場にかがんでいたが、熱くて熱くてとても我慢できない。

 そこで、目玉の飛び出ていない友だちと3人で「逃げられるだけ逃げましょう」と避難を始めたが、「私死ぬる」と1人が倒れた。

「長らくお世話になりました。私はお先にいきます」

 残った2人で「離れまいね(…

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    田中知之
    (音楽プロデューサー・選曲家)
    2023年8月5日7時0分 投稿
    【視点】

    私は毎年8月になると「あぁ、今年で戦後〇〇年かぁ」と感慨深く思うのだが、最近とある言葉を聞いてドキッとした。何首もの心に刺さる反戦歌を詠み、最近『Sad Song』という歌集も出された歌人の窪田政男さんに、とある楽曲の作詞を依頼したのだが、

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2023年8月5日7時0分 投稿
    【視点】

    むごい、本当にむごい話です。「直感というものがなかったら、恐らくわが子であることを否定したであろう」と広島県立広島第一中学校1年の山本真澄さんの父、康夫さんの手記は、子を亡くした親の無念、慟哭が伝わってきます。 5月に開催されたG7広島サミ

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