「帰れ」という言葉はなぜ差別なのか 背後に見えた「大きな日本」

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聞き手・北野隆一

 在日コリアンに対し、ネット上で「帰れ」という言葉が投げつけられることがあります。

 その問題性について意見書を裁判所に出した板垣竜太・同志社大教授(歴史学、社会学)は、「帰れ」が在日コリアンに深刻なダメージを与える背景に、日本政府の排外的な姿勢があると指摘します。

 川崎市の在日コリアン・崔江以子(チェカンイヂャ)さんは、ネット上で「敵国人め。祖国へ帰れ」と中傷を受けました。「帰れ」という発言は、歴史的にも現代においても、在日コリアンに深刻なダメージを与えてきた排除の言語行為です。

 在日コリアン2世や3世にとって、祖先の出身地は朝鮮半島ですが、生まれ育った国は日本です。多くの人の生活基盤は日本で、「帰る」ところなどない。「帰れ」とは、歴史的経緯を踏まえない理不尽な言葉なのです。

反論を許さず、訴えを封じ込める

 この言葉の背景には、立場に…

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この記事を書いた人
北野隆一
編集委員

北朝鮮拉致問題、人権・差別、ハンセン病、水俣病、皇室、現代史

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    望月優大
    (ライター)
    2023年7月29日10時12分 投稿
    【視点】

    「帰れ」という言葉は「この場所から出て行け」と「あなたの本来の場所はここではない」の組み合わせからなっているように思います。後者の役割が特に重要で、そこに「本来の」という意味合いを込めることによって、前者におけるよりストレートな排除の暴力性

    …続きを読む