第1回「きみと死のうと思ったんだ」 娘へのラブレター、あの日の告白に涙

有料記事想いをつづって

編集委員・中島隆

 3月、大阪市のビルの中。

 20~30代の若者たち50人ほどが床に座り、前を向いていた。視線の先に立つ男が手紙の朗読を始めた。

 《娘・ミサトへ

 あなたの母親であり、私の妻であった、我々の最愛の女性は、ある、小さな記事として新聞にも掲載された交通事故により、きみがまだ6歳のときに亡くなりました》

 朗読する橋本昌人さん(58)は、放送作家。漫才やコントのネタや台本をお笑い芸人たちに提供してきた人でもある。だが、この手紙はネタではない。滋賀県のある男性が書いたリアル、だ。

満足げな表情のきみは

 《突然すぎて、悲しみ抜いて、途方に暮れて、精神的に参ってしまった私は、死のうとしたんです。

 バカなことに、きみを連れてお母さんを追いかけようとした。

 その日、最後の思い出にと、家族でよく出かけた遊園地に2人で行きました。

 とにかくきみは楽しそうで、これが最後の遊園地になることも知らずに、いや、今日が最後の日であることも知らずに、元気いっぱい走っては、乗り物をハシゴしてた。

 やがて、急流すべりを乗り終わって、こちらに駆けてきたきみは、満足げな表情で見上げつつ、私と手をつないで、ニコニコしながらこう言いました。

 『もういいよ、お父さん。もう、お母さんのところに行こ』》

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 神妙な表情で手紙を聴いてい…

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