アニメや漫画は人気でも 筒井清輝教授が米国で感じた日本研究の衰退
現場へ! 日本研究の今Ⅱ①
昨年サントリー学芸賞と石橋湛山賞を受賞した筒井清輝・米スタンフォード大学社会学部教授は、米国のマンスフィールド財団が日本の国際交流基金と共に2009年から行っている日米の政策専門家の交流「日米次世代ネットワーク」の3期生だ。同ネットワークに参加し、米国に拠点を置く日本人研究者らを通じ、日本研究を取り巻く現状を探った。
◇
米スタンフォード大学社会学部教授、筒井清輝(52)は昨年出した「人権と国家」でサントリー学芸賞と石橋湛山賞を受賞した。英語の著作物は多いが、日本語の出版はこれが初めてだった。京都大で修士を取って以来米国に。ミシガン大教授を経てスタンフォード大に移った。「まずは米国で業績を、と。日本語の出版は考えていませんでした」
しかし、2020年に同大の教授兼日本プログラム所長になってからは、明確に「日本研究」そして「日本語での発信」を意識するようになった。日本研究の衰退を実感し、日米をつなぎ米国での日本研究を活性化する必要性を痛感するからだ。
日本プログラムは同大のアジア太平洋研究センターに属する。同センターの教授で中国研究は8人、韓国は4人、日本はいま筒井1人だけ。1990年代には3、4人いたという。
日本のアニメ、漫画、ゲームなど文化は人気で、米国での日本語学習者が減っているわけではない。「しかし社会科学系の日本離れは深刻」だと筒井は言う。「そもそも地域研究そのものが衰えており、理論やモデルなどに力点が置かれている。とはいえ中国研究は発展しているし、ドイツやフランスなどヨーロッパも研究対象として関心を維持している」。2019年には北米アジア学会で「日本研究の死」というタイトルのセッションが開かれ、注目を集めた。
「日本研究の層の薄さは、米…