老舗旅館の経営者はローカル鉄道応援団 思わず発した言葉が転機に
房総半島の太平洋側、千葉県いすみ市に江戸時代から続く旅館の7代目経営者だが、週末には列車の形のかぶりものを身につけて、小さな無人駅で弁当を売り歩く。鉄道ファンには欠かせない「鉄分」はない、と自覚するが、半島を走る第三セクター・いすみ鉄道の「応援団長」でもある。
掛須保之さん(61)。
昨年末には、全国各地で存廃論議が巻き起こるローカル鉄道の中で、7路線を応援する人たちを集めたサポーターズサミットを開いた。
2009年、地元商工会の集まりで
「今ごろ何がムーミンだ」――。鉄道にかかわる転機は2009年のことだった。いすみ鉄道の公募2代目社長、鳥塚亮氏(現えちごトキめき鉄道社長)が地元商工会の集まりでムーミン列車の計画を説くと、反対の声が相次いだ。「人も来ないのに売店なんかやってどうするんだ」。そんな反応もあった。
アロハシャツに茶髪。会合でも斜に構えていた当時47歳の掛須さんだったが、思わず発言していた。
「やりてえというんだったら、やらしてやればいいじゃねえか」
「地域に金出してくれとかじゃないでしょ。鉄道会社が金を出してやりたいと」
言葉はせきを切ったように飛び出した。
「なんでできない理由をそんなに並べるの」
空気は一変した。
「鉄道がなくなれば、地図から消え……」
閉塞(へいそく)感が強い地…