差別意図しない「不安」にどう応える トランスジェンダーの日常とは

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 「入浴施設や公共のトイレでは体の性に合わせて区分する方がベター」「公共の施設で、身体が男性の方に入って来られたら、恐怖心を抱いてしまう」。俳優の橋本愛さんは3月、SNSにそう投稿した。しかし「考えの至らないまま発言」したと謝罪した。

 こうした「不安」を抱く人は多いが、橋本さんはなぜ謝ったのか。

トランスジェンダーのトイレ使用、広がる論争 「差別助長」と危惧も

トランスジェンダーのトイレ使用をめぐり、論争が起きています。「女性の安全が脅かされる」といった不安の声が上がり、その矛先が当事者らに向かう。これに対し、支援団体などは「差別を助長する」と反論しています。この議論にどう向き合えばいいのでしょうか。

 橋本さんはその後、週刊文春の連載で「悪意なき差別をしないためには、LGBTQ+の方々の経験を、声を聞く必要がある」「(LGBTQ+への)『今ある差別』を知らなければならない」とつづった。

 トランスジェンダーの多くは、自認する性別で生きるために、何年もかけてホルモン投与などで外見を変え、社会との調和を図りながら暮らしている。自認する性別としてみなされるようになる「社会的な性別移行」が終わるまでは、男女のどちらに見られるか、常に緊張を強いられている。

 性別適合手術を受ける人もいるが、一部にとどまる。生殖能力を失うもので、肉体的・金銭的な負担も大きいからだ。

当事者「性別移行の段階に応じて、慎重に選択」

 公衆トイレの利用は緊張と隣…

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2023年7月19日10時0分 投稿
    【視点】

    差別禁止に反対する意図からトランスジェンダーへの「女性の不安」を煽っているのが自民党内の保守系議員やそこに群がる保守的論者であることが、記事でははっきり指摘されている。 たださえ社会的にバルネラブルな状況にあるトランスジェンダーの人たちは、

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    高橋末菜
    (朝日新聞経済部次長)
    2023年7月19日11時20分 投稿
    【視点】

    今回の取材班がこのテーマの取材に具体的に動き出したのは、俳優の橋本愛さんのSNSでの投稿が話題になったことがきっかけでした。ただ橋本さんのように不安を感じる人は少なくなく、彼女の発言内容やそれに対する批判、同調をどう捉え記事にしてけばいいの

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