書店員の聖地の「本屋」が閉店 それでも絶えない人とのつながり

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吉田博紀

 「書店員の聖地」と言われた小さな本屋が、鳥取市にあった。店舗としての営業は4月に終えたが、本によって人と人をつなぎ、地域に文化を根づかせるための活動は新たなステージに入った。(吉田博紀)

きっかけは、妻の故郷への移住

 鳥取県立図書館や学校が集まる文教地区とJR鳥取駅を結ぶ大通りの中ほどに、「定有堂書店」がオープンしたのは1980年。東京で郵便局員などをしていた奈良敏行さん(74)が、妻の実家のある鳥取に移住したのがきっかけだった。

鳥取の小さな本屋は、最初から「聖地」だったわけではありません。変身のきっかけは、知り合ったばかりの人の一言でした。

 何か起業しようと、喫茶店などを考えた。だが本好きでもあったので本屋を選んだ。当初の品ぞろえは特色もなく、書籍取次会社から薦められるままに売れ筋の本を置いていた。

 知人に「本好きにしては普通の本屋だね」と言われたことを機に、150平方メートルほどの小さな店は、少しずつ変身していく。

「ちいさな道しるべと自己肯定」にじむメッセージ

 「心が動く、言葉(レター)の力」「同じでないが似ている」「ちいさな道しるべと自己肯定」……。

 書棚にはそこここに付箋(ふ…

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    太田泉生
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=人権)
    2023年10月5日18時0分 投稿
    【視点】

    仕事で鳥取を訪ねた昨年、鳥取駅から鳥取県庁に向かって歩く途中で店の前を通りかかった。静かな大通りにあって独特のオーラを放っていて、吸い寄せられるように店に入った。 手書きのポップを添える工夫は各地の書店でみられるが、この店は選書がひときわ独

    …続きを読む