「日本一運賃が高い」北総鉄道、累積赤字を解消 なお巨額負債抱える

近藤咲子
[PR]

 千葉ニュータウンを走る北総鉄道(本社・鎌ケ谷市)が、一時は400億円規模に上った累積赤字を2022年度で解消した。巨額の建設債務や利用客の低迷で、「日本一運賃が高い」と批判もされてきた。まだ500億円を超える有利子負債があり、難しい経営のかじ取りは続く。

 22年度の輸送人員は、昨年10月に実施した大幅な運賃値下げなどから、前年度より12・5%増えて3531万人。ただ、値下げは収益も圧迫し、売上高は同1・3%減の139億3500万円、純利益は同0・7%減の17億5800万円で減収減益だった。黒字の達成は23年連続で、開業時からの累積赤字を解消した。

 1979年に千葉ニュータウンの通勤通学の足として開業し、京成高砂(東京都葛飾区)―印旛日本医大駅(印西市)間の32・3キロを結ぶ。日本鉄道建設公団(現鉄道・運輸機構)が建設し、事業者が費用を償還する「P線方式」を採用。建設費1298億円を鉄道収入で返済している。

 だが、返済計画の肝だった、当初は計画人口34万人を掲げた千葉ニュータウンの人口は、バブル経済の崩壊の影響などで約11万人にとどまり、北総鉄道の利用者も伸び悩んだ。81年に全体で約16%の運賃値上げをしたのを皮切りに、繰り返し値上げを実施。周辺の私鉄と比べても割高さが際立つようになり、2019年から初乗り210円、新鎌ケ谷駅―千葉ニュータウン中央駅580円となった。

 一方、成田スカイアクセス開業などで、10年度には売上高が初めて150億円を突破。累積赤字が解消するメドがたったことなどから、22年10月に開業以来初の本格的な値下げに踏み切った。全体の値下げ幅は約15%で、特に通学定期を約64%と大幅に割り引いた。

 ただ、現在も約578億円という巨額の有利子負債が残っており、原油価格の高騰など経営環境も厳しさを増している。今後も着実な需要の掘り起こし策などが求められている。

   ◇

 6月23日の株主総会日付で、新たな社長に京成電鉄取締役の持永秀毅氏が就いた。前社長の室谷正裕氏は会長に就任した。(近藤咲子)

     ◇

北総鉄道をめぐる主な経緯

1979年 1期線(小室―北初富)開業

  81年 16.8%の値上げを実施

  91年 2期線(新鎌ケ谷―京成高砂)開業

  93年 急行運転開始

  95年 千葉ニュータウン中央―印西牧の原間開業

2000年 印西牧の原―印旛日本医大間開業。開業以来初の単年度黒字達成

  01年 特急運転開始

  10年 成田スカイアクセス開業。年度売上高が150億円を超える

  12年 25年度まで延長していた建設費の返済期間をさらに35年度まで延長

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません