数学の超難問「ABC予想」を証明したとする、京大数理解析研究所の望月新一教授による「宇宙際(うちゅうさい)タイヒミュラー(IUT)理論」。この理論の間違いを証明すれば100万ドル(約1億4千万円)の賞金が手に入ることになった。ただ、この理論は「どこが分からないかさえ分からない」と数学者に恐れられているほど難解だ。いったいどんな理論なのか。
「非常に精巧で複雑な機械のような構造で脳が疲れる。プロの数学者でさえ、『え?』となる」
京大数理研の玉川安騎男(あきお)教授はかつて、IUT理論をそう評した。
IUT理論は、望月さんが、超難問「ABC予想」を解くために、1人で20年近くかけ築き上げた独自の理論。理論が正しいか検証する専門家の理解に時間がかかり、発表から論文の出版まで異例の8年半に及んだ。
論文には、従来の数学を「破壊した」と望月さんが語るように、まったく新しい概念の定義や用語が次々に現れる。「未来からやって来た理論」などと恐れられるゆえんだ。
日本を代表する数学者で京大高等研究院の柏原正樹特定教授も「新しい概念が次々に出てくる。理解は一筋縄ではいかない」と語る。
無限個の宇宙で、数の世界を攻略
その真骨頂は「宇宙際」という言葉にある。
宇宙とは、足し算やかけ算…