映画「バービー」がベトナムで上映中止に 中国との政治問題が飛び火

バンコク=大部俊哉
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 バービー人形の実写版映画「バービー」がベトナムで上映禁止になった。

 米ワーナー・ブラザーズが配給する「バービー」は、マーゴット・ロビー演じるバービーとライアン・ゴズリング演じるケンが、人間界に迷い込んで繰り広げるストーリーだ。

 ベトナムでは7月21日に公開される予定だったが、国営紙トイチェによると文化・スポーツ・観光省の担当者が3日、配給停止を明らかにした。配給会社のウェブサイトからは、作品の画像が削除された。

 上映禁止の理由は、中国の「9段線」が登場することだという。

 ベトナムなど複数の国・地域が南シナ海で中国と領有権を争っている。中国は9段線と呼ばれる境界線を独自に示し、ほぼ全海域の管轄権を主張。ベトナムは自国が領有権を主張するエリアも含まれているため、反発している。

 この9段線が示された地図が「違法な画像」として映画に出てくると、トイチェは報じた。

 「バービー」はベトナムでも大々的にPRされ、市民の期待が高まっていたが、政治問題が飛び火した形だ。ただ、ベトナム国内での中国への反感は根強く、SNSでは禁止を支持する投稿が相次いでいる。

 9段線をめぐっては、2016年にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が「法的根拠がない」などと否定する判決を出したが、中国は判決を受け入れていない。

 昨年には米国のアクション映画「アンチャーテッド」も9段線が映っているとして上映中止となった。19年には、米中合作のアニメ映画「アボミナブル」も同様の理由で公開後に中止となり、配給会社が1億7千万ドン(約100万円)の罰金を科された。(バンコク=大部俊哉

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