フランスの暴動の背景に何が?「人権の国」が抱えるタブーと深い分断

有料記事

宋光祐
[PR]

 フランスで警官による少年の射殺事件をめぐる暴動が始まってから、4日で1週間を迎えた。亡くなった少年は北アフリカ系移民の出身で、移民や低所得者層が多いパリ郊外に住んでいた。事件をきっかけに「人権の国」を標榜(ひょうぼう)するフランスで、人種差別や不平等の議論が再燃している。

 仏政府筋によると、抗議行動が始まった6月27日からの逮捕者数は合計で3400人を超えた。負傷した警察官や消防隊員は684人に上る。抗議行動の規模は縮小傾向にあるが、仏内務省は4日未明にも全土で4万5千人の警官隊を配置。政府高官は3日、「危機を脱したとはまだ言えない」と述べ、警官隊の大規模な配置を続ける考えを示した。

 抗議が始まったきっかけは、6月27日朝、乗用車を運転していた北アフリカ系の少年(17)がパリ郊外のナンテールで警察官の交通検問を拒否した際に射殺された事件だった。警察は当初、発砲が正当だったと主張したが、事件当時の動画がSNSで拡散。車が立ち去ろうとした瞬間に警官が銃を撃つのが映っていた。

 フランスでは2016年に警察官への襲撃事件が相次いだことから、交通検問の際に身の危険がある場合には警察官がその場で発砲できるように17年に基準が緩和された。仏内務省によると、交通検問時の発砲で死亡した事件は、20年が2件、21年が4件で横ばいだったが、22年は13件に急増した。今年は少年の例を含めて3件起きている。

 「身の危険」の判断は現場の警察官に委ねられているため、法改正の当初から拳銃使用の基準が緩すぎるとの批判がある。だが、政府は「大幅に問題が増えているとは言えない」として、事件後も法律に問題はないとの姿勢を続ける。

警察への怒り、なぜ暴動にまで?

 警察の対応に矛先が向いてい…

この記事は有料記事です。残り842文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    パトリック・ハーラン
    (お笑い芸人・タレント)
    2023年7月5日7時44分 投稿
    【視点】

    抗議デモの背景も訴えはよくわかるが、今や暴動に化けてしまっていることが本当に遺憾だ。  アメリカでもよく見るパターンだ。2020年のジョージフロイド殺害事件、1991年のロドニーキング暴行事件、もっと遡れば1968年のキング牧師暗殺事件も

    …続きを読む