第1回「世界一なのにエコノミー」から11年 辛抱強いられたなでしこの今
有料記事なでしこたちのワインディング・ロード 女子サッカーの闘い
照屋健 遠田寛生2021年の秋。
サッカー日本女子代表、愛称「なでしこジャパン」の主力選手たちが、日本サッカー協会(JFA)の幹部と画面越しに向き合っていた。
話し合いのテーマは「日本代表の待遇」。
移動便やホテルのグレード、体調を管理してくれるスタッフの人数……。女子代表と男子代表の間には、そうした環境面で長い間、歴然とした差があった。
「これまでは、話し合う場もなかった」と選手たちは振り返る。
ようやく実現したオンラインミーティング。主将でチーム最年長の熊谷紗希(32)とJFA会長の田嶋幸三(65)らの議論が始まった。
なぜエコノミー?監督の答えは…
「世界王者なのにエコノミー」
そう海外メディアが報道し、なでしこジャパンを巡る環境に注目が集まったのは12年ロンドン五輪のことだった。
その前年のワールドカップ(W杯)ドイツ大会で、澤穂希(44)らの活躍によって初優勝を果たし、「世界王者」として迎えた五輪だった。
23歳以下の若手中心で編成された男子代表がビジネスクラスで欧州入りしたのに対し、同便だった女子代表の座席はプレミアムエコノミークラスだった。
「(11年女子世界最優秀選手の)澤さんがエコノミーなのに、なぜ男子はビジネスなの?」。そう感じる選手もいたという。
ただ、当時も代表メンバーだった熊谷は振り返る。
「あの時は、それが当たり前だと思っていた。何かを言える雰囲気でもなかった」
当時、女子選手の多くは、生…