生活保護の受給者、疑わしき人をAIがリスト化 倫理的な問題は?
スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演のSF映画『マイノリティ・リポート』(2002年)を見たのは、もう20年以上前のことだ。犯罪が多発し、多くの人が殺される近未来の米国。しかし、とある新システムが開発されたことで、殺人発生率が0%になる――。
当時は、まだ若かったトム・クルーズの圧倒的な存在感が目に焼き付いて、ストーリーはうろ覚えだった。でも、いま見直すと、まったくの絵空事とは思えなかった。そんな未来を予感させる事件が、実際に欧州で起きていたからだ。
オランダ第2の都市ロッテルダムは、170以上の国・地域から移民を受け入れている多国籍都市だ。60万人以上が暮らすこの街では今、約3万人が生活保護を受給している。
21歳以上の単身者は月約1195ユーロ(約18万円)、夫婦なら月約1708ユーロ(約25万円)など年齢や家族構成によって支給額は変わる。収入を隠したり、家族構成を偽ったりする「不正受給者」をあぶり出すため、市当局は毎年、最大約6千人の「疑わしい人」をリストアップし、面接してきた。
何らかの形で一定数の受給者をピックアップし、確認することは多くの自治体で行われているが、ロッテルダム市はその「切り札」として、外資系コンサルティング大手と共同でAI(人工知能)システムを開発した。だが17年には試験的に導入していたのに、そのことを公にしていなかった。
まさかAIに選ばれていたとは……
「そんな重要な決定が市民に…
- 【視点】
記事を書いた玉川記者と同じように、私も記事を読んで複雑な気持ちになりました。生活保護の不正な受給を極力防止しなければならないのは当然です。しかし、そのためのAIシステムが開発され、実際に使っていた国があるとは…。 日本に引き寄せて考えて
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