迷いや中断もOK 新国立劇場・小川絵梨子が挑む演劇の長い創作

有料記事リレーおぴにおん

聞き手・山口宏子
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 新国立劇場で、演劇部門芸術監督の小川絵梨子さんが、「創作に長い時間をかける」試みを続けています。「効率」にあえて背を向けた視線の先には、「50年後」の演劇界がありました。

リレーおぴにおん 「長すぎる」

 ――芸術監督として、上演を前提としないで演出家と俳優たちが1年かけて一つの芝居に取り組む「こつこつプロジェクト」、全ての出演者を公募する「フルオーディション」など、手間と時間のかかる事業に特に力を入れてきましたね。いずれも海外では一般的ですが、日本では珍しい取り組みです。

 「この劇場から社会と演劇界に何が還元できるかを考え、作品に長く取り組む場を作り、新しい創作の仕方を開拓しようと決めました。新国立劇場が持っている力を使ってやるべきことは『ここでしょ!』という気持ちです。(芸術監督の準備として)芸術参与に就任した2016年から考えていました。多くの人と一緒に、『こういうやり方もあるよね』ということを体感することが狙いです」

 「日本の演劇の稽古期間はたいてい約1カ月。それを否定するわけではありませんが、私自身、演出家として、もっと時間があれば、俳優やスタッフとさらに踏み込んだ対話を重ねて、新しい表現にたどり着く可能性があるのにと感じることがあります。その『次の可能性』を生み出すシステム作りを目指したいと思ったのです」

稽古1カ月、どうやって作るの?

 ――ニューヨークから帰国して、日本のやり方に違和感を抱いたのですか?

 「違和感というより、『どう…

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