第3回香港の真相、伝えるために 廃刊したリンゴ日報元記者たちが挑む壁

有料記事統制の果てに 香港国安法3年

台北=石田耕一郎

 暗闇のなか、たとえかすかでも、世界に散らばる同胞を互いに認識できる「光」になりたい――。

 今年4月、台湾で小さなネットメディアが生まれた。公式サイトの冒頭でうたうのは、香港国家安全維持法(国安法)の圧力に屈せず、香港人の多様な声を社会に届けたい、という強い思いだ。

 「香港の未来のために、民主派の主張を含め、若い世代に伝えていくメディアが必要だと考えた」

 移住先の台湾で4月に「光伝媒(メディア)」をつくった香港人女性記者、梁嘉麗さん(41)は言う。

 梁さんは中国共産党に批判的な論調を貫き、2020年6月末の国安法施行後の弾圧で廃刊に追い込まれた「リンゴ日報」の中堅記者だった。本社が受けた警察の捜索で自身のパソコンを押収されたほか、上司の編集幹部や取材相手が相次いで逮捕された。

 自らも携帯電話の番号などの個人情報をネット上にさらされて脅迫を受けるようになり、身の危険を感じて昨年9月に渡米。在籍した米国の大学院で香港人の記者と香港の民主化について議論するなか、旧知の記者仲間がいた台湾でのメディア設立を決意した。

 「親中紙の報道で、今の香港の出来事がゆがんで記録されてしまうのを避けたかった」

香港の真相を伝えようと、弾圧に屈しない香港人の記者たちが新たにメディアを立ち上げています。しかし、国安法によって、取材先の対応に変化が起きているといいます。

 社員は自身を含めて香港人3…

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    市原麻衣子
    (一橋大学大学院法学研究科教授)
    2023年7月2日11時15分 投稿
    【視点】

    香港における言論や報道の自由が抑え込まれたことで、香港の実体を掴むことが非常に難しくなった。国外においても、リンゴ日報の創業者ジミー・ライの息子が国連人権理事会で発言すれば中国にこれを妨害され、香港人民主活動家が国外で活動をしていても監視さ

    …続きを読む