よみがえった朝鮮人患者の言葉 作品の上映中止で見えた「タブー」

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編集委員・北野隆一

 昨年、東京都の外郭団体主催の企画展で、ある映像作品の上映が中止されました。

 題材となったのは、関東大震災の数年後に精神科病院に入院した、朝鮮人患者2人の診療録。なぜ作品は上映中止にされたのか。そこから見えてきたものとは?

現場へ! 関東大震災と朝鮮人虐殺

 美術作家の飯山由貴(35)が精神障害を扱う映像作品をつくったきっかけの一つは、精神疾患を患う妹の存在だった。

 作品「あなたの本当の家を探しにいく」では、妹が心身の調子がすぐれないとき「本当の家を探しに行きたい」と出て行こうとする。それを聞き流さず、調子のよい日に夜の町を姉妹で会話を交わしながら一緒に歩き、動画で記録した。

 飯山はハンセン病療養所に長年隔離された元患者や、無年金状態に置かれた在日外国人障害者なども取材した。関心は家族から、日本の医療制度に広がった。

 医学史を研究する慶応大教授(現在は東京大教授)の鈴木晃仁(59)から、1945(昭和20)年に焼失した東京都北区の精神科病院「王子脳病院」の患者診療録について教わった。

 診療録を読んだ飯山は、2人…

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    西岡研介
    (ノンフィクションライター)
    2023年6月24日17時21分 投稿
    【視点】

    怖いなぁ……この記事。どこが怖いって、東京都〝人権部〟職員のこのコメント。「知事がこうした立場をとっているにもかかわらず、朝鮮人虐殺を『事実』と発言する動画に懸念がある」。都知事が歴史修正主義者だと−−その言動が、過去の史実から判断して、明

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