娘が自殺、憎しみ続けた6年間 両親がいじめた同級生と和解するまで

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中山直樹

 「電車に飛び込んだら、賠償金はいくらかかるかな」

 ある朝、高校2年の長女からの突然の質問に、母親(46)は少し面食らった。「莫大(ばくだい)なお金がかかるよ」。

 その後、長女はいつも通りに家を出て学校に向かった。なのに午前9時半ごろ、LINEが届いた。「ごめんね」

 胸騒ぎがした。連絡を受けた父親(46)もすぐ会社を休んで帰宅を急いだ。まもなく、通学途中の墓地で倒れているところを発見された、と消防から連絡があった。

 救命措置も施されたが、間に合わなかった。

 2017年4月17日。自殺だった。

    ◇

 長女の名は「瑞菜(みずな)」。みずみずしい子に育ってほしいとの願いを込めてつけた。そのとおり、誰にでも分け隔てなく接し、よく笑う子だった。

 母親のママさんバレーについていっては、他の年下の子どもたちの世話をする面倒見のいい一面もあった。犬が好きで、「将来はドッグトレーナーになりたい」と語っていた。

 2016年に北九州市内の私立高校に進学すると、バレーボール部に入った。

 半年ほど経ったころ、帰宅した瑞菜さんは、「友だちから仲間はずれにされている」と母に漏らすようになった。仲良し5人のグループ内でトラブルが広がっているようだった。

 瑞菜さんから告げられる「仲間はずれ」の内容が悪化していった。

 移動教室の際、4人に置いてけぼりにされた。終業式では、4人だけで記念写真を撮っていた。

 次第に、家でも瑞菜さんの口数が少なくなっていった。母親が「今日は学校でどうだった」と聞いても、返事が要領を得ないことも増えた。

 母親は「あんまし目立つような行動だけやめときね」と伝えた。ただ、女の子たちにはよくあることだと思っていた。

 それが、まさか、こんなことになるなんて――。

 お通夜には多くの同級生が参列してくれた。娘が大勢の友人に囲まれていたことが分かった。

 だからこそ、両親の中で「なぜ」という思いがますます膨らんだ。

 数日後、次女が、瑞菜さんが亡くなる直前に同級生にLINEを送っていたらしいといううわさを耳にした。

 学校に問い合わせると、教師からLINEのやりとりを印刷した1枚の紙を渡された。自殺の1時間前、仲間はずれにしていた同級生らの実名とともに、瑞菜さんがそのうちの1人に送ったメッセージだった。

 〈何かあったら後悔しても知…

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この記事を書いた人
中山直樹
ネットワーク報道本部|都庁担当
専門・関心分野
人権問題、災害、人口減