「悪役令嬢」なぜ人気? 小説の出版、10年で0→108点に急増

加藤勇介
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 お金持ちのお嬢様だけど、わがままで高飛車な性格で「オホホ」と高笑い。そんな「悪役令嬢」を主人公にした本が相次ぎ刊行され、アニメ化されるなど人気ジャンルとなっている。なぜ今、悪役が人気を集めるのだろうか。

 出版科学研究所の調べによると、タイトルに「悪役令嬢」を含む小説の出版点数は2012年が0点、13年も「悪役令嬢後宮物語」の1点だけだったのが、19年は55点、22年は108点と急増した。

 15年出版の「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」は漫画化、アニメ化、舞台化と展開され、年内には映画公開も予定される。22年出版の「私の推しは悪役令嬢。―Revolution―」は「このライトノベルがすごい!2023」にランクインし、秋にはアニメ化予定だ。その他、タイトルにはうたわないものの悪役令嬢の世界観で展開される物語も数多い。

 様々なパターンがあるが、主流なのは現世ではさえない主人公が転生した異世界では大活躍して異性からモテるといった「異世界転生」の流れを受けたもの。主人公の女性が転生してしまったのは女性向け恋愛シミュレーションゲームの世界の悪役令嬢キャラ。自分が遊んだゲームだと、王子はヒロインに奪われ、自身は悪行がたたり身を滅ぼす運命が待ち受ける。破滅を回避するため、現世の知識やゲームのストーリーを知っていることを生かして奮闘する、という展開だ。

 文筆家の荻原魚雷さんは「平凡な設定のわりには天賦の才能や容姿を持っている、受け身なのになぜか周囲からチヤホヤされる、そんな従来のヒロイン像がもう成り立たなくなってきたのでは」と見る。

 医師で作家の津田彷徨さんは「物語の構造の分かりやすさ」を挙げる。破滅回避と話の筋が明確で、悪役だから普通の行動をするだけでギャップが出る面白さがあり、令嬢だから多少のご都合展開も財力や人脈で説明がつく。「だから小説投稿サイトに次々と書き手が現れ、作品が増えることで読者も増える好循環が起きている」と指摘する。(加藤勇介)

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