中国の「国防7校」教授を兼任 先端技術漏らした疑いの産総研研究員

吉沢英将
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 「産業技術総合研究所」(茨城県つくば市など)の研究データを中国企業に漏らしたとして、不正競争防止法違反(営業秘密の開示)容疑で警視庁に逮捕された中国籍の研究員の権恒道(チュエンホンダオ)容疑者(59)が、産総研で働き始めて以降、中国の北京理工大学で教授を務めていたことが捜査関係者への取材でわかった。

 同大は、中国人民解放軍と関連が深いとされる「国防7校」の一つ。警視庁公安部は、権容疑者と中国企業との関係やデータを漏らした目的について捜査している。

習近平氏と握手の写真

 捜査関係者などによると、権容疑者は2002年から産総研で働き、06年12月に北京理工大から教授に任命された。18年1月には、中国の「全国科技大会」で自身の研究が表彰を受け、習近平国家主席と握手する写真が華僑団体のホームページに掲載されている。中国で会社を設立したとの記載もある。

 権容疑者は18年4月、中国企業が使用するメールアドレスに、フッ素化合物の合成技術情報が記された研究データを送信した疑いがある。「営業秘密にはあたらない」と容疑を否認しているという。

 中国企業は化学メーカーで、日本にも代理店がある。代理店は権容疑者の妻が代表を務めているという。情報の内容は、地球温暖化対策にも有用な研究データだという。

 日本の先端技術をめぐっては、国外への流出が懸念されている。経済安全保障に関わる情報保全を強化するため、政府は、機密情報を扱う人物の身辺を調べる「セキュリティークリアランス」(適正評価)制度の導入を検討している。

 松野博一官房長官は16日の記者会見で、「逮捕者が出てしまったことは誠に遺憾」と話し、経済産業省から産総研に対し、情報漏洩(ろうえい)対策の徹底を指示したと述べた。(吉沢英将)

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