防犯カメラをふさいだ行為は正当防衛か 認めた高裁が逆転無罪の判決

松浦祥子
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 大阪市西成区で2019年、大阪府大阪労働局が設置した防犯カメラに手袋をかぶせるなどして撮影を妨げたとして、威力業務妨害罪に問われた男性3人の控訴審判決が14日、大阪高裁であった。3人の行為がプライバシー保護のための正当防衛に当たるかが争点で、斎藤正人裁判長は、罰金10万~50万円とした一審・大阪地裁判決を破棄し、全員に無罪を言い渡した。

 3人は、日雇い労働者の街として知られる同区内のあいりん地区(通称・釜ケ崎)の労働組合執行委員長の稲垣浩さん(79)ら。

 高裁判決によると、あいりん地区では同年、中心的施設の「あいりん総合センター」が閉鎖され、反対派が敷地内に拠点を設けた。カメラは拠点が映る角度に向けられ、府側は「近隣で起きた放火事件を受けた防犯目的」と説明。一審判決は府側の説明などから、3人の行為を「防犯業務の遂行を損なう」と認定していた。

 高裁判決は、カメラ以外の防犯対策がなかったことなどに着目し、府側の説明を「アリバイ作り」と指摘。府が施設閉鎖後も周辺で路上生活を続ける人に対し、明け渡しを求める裁判を起こしていたことから、撮影目的を「萎縮効果を与え、立ち退きを余儀なくさせる状況に追い込むことだった疑いが強い」と認定した。また「撮影はプライバシーを侵害する違法な行為で業務妨害罪による保護には値しない」とも述べ、3人の行為が正当防衛にあたると結論づけた。

 判決を受けて、稲垣さんを弁護した後藤貞人弁護士(大阪弁護士会)は「防犯目的は口実に過ぎないときちっと認定した非常に優れた判決だ」とコメント。大阪高検の小弓場文彦次席検事は「判決内容を精査したうえで適切に対応する」とした。

 一方、府は朝日新聞の取材に対し、「判決内容を確認していないが、カメラは防犯目的で現在も撮影を続けている」と回答した。(松浦祥子)

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