建設業が「男社会」と思い込まないで 初の女性現場所長が示した見本

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編集委員・中島隆

 灰色の町工場や倉庫が多い大阪府東大阪市にこの春、カラフルな倉庫が完成しました。青色と黄色の外観、倉庫の中はピンクがアクセントになっています。工事を担当したのは三和建設(本社・大阪市淀川区)。創業70年あまりのゼネコンにとって、この建設には大きな意味がありました。

 建設現場の総責任者である現場所長をつとめたのは中嶋佳子さん(46)。三和建設で初めて誕生した、女性所長だったのです。

 中嶋さんの父は、不動産会社の社員だった。家に持ち帰った家の間取り図を見ながら、中嶋さんは、想像することが好きだった。

 〈ここは私の部屋、ここはお父さんの部屋……〉

 商業高校に進む。卒業後、ものづくりをしたくて建築資材の町工場に入るも、倒産してしまった。

 大手建材会社に入って実務を重ね、「1級建築施工管理技士」をとった。建物の建設計画づくりや作業員の安全管理など、建設現場のすべてを仕切ることができる国家資格である。

 そして2018年夏、中嶋さんは41歳で、三和建設に転職した。自分の手で建物をつくりたいと考えた。

 現場で技能を磨き、昨年、同社初の女性所長として、今回のカラフルな倉庫づくりを任された。

建設の現場はずっと「男の世界」

 三和建設は1947年、木造建築の会社として誕生した。ゼネコン、つまり総合建設業として発展し、現在、年商100億円、社員160人になっている。

 この10年ほど力を入れてきたのは、女性社員を増やし、活躍してもらうこと。建設の現場はずっと「男の世界」だったからだ。

 作業所に女性用更衣室やトイ…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年5月31日11時30分 投稿
    【視点】

    この記事で取り上げられている三和建設株式会社(本社:大阪市淀川区)には、ゼミ活動における連携で日頃からお世話になっている。三和さんの経営理念「つくるひとをつくる」とそれに基づく企業としてのかたちを私がどこまで理解できているかわからないが、こ

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    首藤若菜
    (立教大学教授=労働経済学)
    2023年5月31日13時49分 投稿
    【視点】

    以前、男性が多い職場に女性が参入していく事例を調査していました。鉄道業、製造業、タクシー、運送業などのほか、建設業も調査しました。 私が調査をした職場では多くが、女性が参入する前、「この仕事は女性には無理だ」と思われていました。しかし、い

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