熊井洋美
仕事がうまくいかないのは、発達障害のせいだったんだ――。40代の女性がそのことに気づいたのは、38歳のときだった。
暴力をふるう元夫から逃れ、シングルマザーとして一般企業で働いてきた。これまで、職場における「暗黙の了解」がわからないことが何度もあった。
たとえば部内の飲み会は、「任意」参加とあっても強制参加であること。根回しがとっくに終わっている会議なのに、手をあげて発言し、嫌がられたこともあった。
おかげで、「場の空気が読めないやつ」「生意気なやつ」と思われてきた。
子どもが発達障害と診断されたのをきっかけに、女性も検査を受け、ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)だとわかった。
5年前、障害者雇用の枠で、東京都内のIT企業に契約社員として採用された。
会社には入社前に、二次障害のうつ病の治療を受けていることに加え、障害の特性を書面で伝えた。
「有休をもらった後は必ずお菓子を配るなど、会社やコミュニティー独特の習慣に気づかないことがあります」
「あらかじめ守るべきマナーやルールについて、上司や先輩に伺うようにしています」
成果をあげるためにも、自分の特性を理解してもらいたいと思っていた。
だが新人研修の最終日、配属された部署のチームリーダーである年下の女性上司から、面と向かって言われた言葉に凍り付いた。
女性の面倒を見ることは「私の…