藤井聡太竜王が渡辺明名人に先勝 重なる永世名人の姿 名人戦観戦記

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【名人戦七番勝負第1局】 後藤元気

▲(先手)名人 渡辺明 △(後手)竜王 藤井聡太

名人戦開幕

 花びらふみふみ神田川。汗をかきかき目白坂。3泊4日分の荷物を引きずり勾配のきつい坂道を登っていく。

 名人戦の開幕局が椿山荘で行われるようになって以来、桜を横目で見つつ、神田川沿いの門から庭園に入るのが定跡だった。しかし今年は門が閉ざされており、江戸川橋の方から30分ほどの遠回り。

 ふと、想定外の展開になったときの棋士の心境を思う。将棋ソフトによる事前研究が進歩して、終盤までほとんど時間を使わずに進むことも多くなった。それだけ事前に労力を費やすと、早々に準備を生かせない形になったとき、気落ちしたりはしないのだろうか。

 振り駒は歩が4枚で名人の先手番。数日前に飯島栄治八段に誘われて中田宏樹九段の墓に手を合わせてきたので、個人的には中田さんが得意だった矢倉を見たいと思っていた。

 渡辺の指は飛車先に伸びて▲…

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