LGBT差別発言、無かったことにできなかった 宮沢氷魚は声あげた

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細見卓司

 約4カ月前の2月3日夜。日本政府の中枢にいた当時の首相秘書官が官邸で記者団のオフレコ取材に、性的少数者や同性婚をめぐって「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと差別発言をした。同性愛者たちの恋の時間を捉えた映画「エゴイスト」の公開が1週間後に迫っていた出演者の宮沢氷魚(29)はこの3日後、日本外国特派員協会の会見で、「政治的発言はあまり述べてこなかった」とした上で「他国に比べると、日本は後れをとっているところがたくさんあると思う。そんななか、世論が声をあげたのは、日本の未来に希望がみえる」などと語った。宮沢はなぜ、一歩踏み出して声をあげたのか。このほど朝日新聞の取材で、胸の内を詳しく明かしてくれた。

 初主演映画「his」や話題を呼んだ「エゴイスト」のゲイ役、26日公開の「はざまに生きる、春」(葛里華監督)で演じた発達障害のある画家役……。一歩間違えると、当事者への偏見を助長し、傷つけかねない。そんな懸念について、責任感の強い彼は百も承知だ。それでも、彼は芝居を通して社会のあり方を問い続けている。

 「僕の身近に発達障害の人がいて、彼の成長を見てきました。当事者に対して広く社会的な理解があるかというと、まだ達していないと思います。今作で何かが大きく変わることはないかもしれませんが、彼らが少しでも生きやすい、そして理解されやすい世の中になればいいなと思っていました」

 「はざまに生きる、春」では、雑誌編集者の小向春(小西桜子)がある日、取材で画家の屋内透(宮沢)と出会う。屋内はこだわりが強く、何かに集中すると途中でやめられない。人の気持ちを察することも苦手でストレートに思いを口にするが、人の顔色ばかりをうかがってきた春にはそれが新鮮。どんどん屋内にひかれていく。

 宮沢は撮影前に当事者に話を聞く機会を持ち、日常会話に近いトーンで接するよう心がけた。

宮沢氷魚さんのインタビューでは、生きづらさを抱える役に向き合う真摯な姿勢が伝わってきました。そして記者が責任の重い役柄を相次いで引き受ける思いについて尋ねると、宮沢さんは自ら「あの発言」について話し始めてくれました。

 「最初は質問や疑問点をいく…

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