ゼレンスキー大統領、G7で得た外交成果とは 東野篤子教授の視点

有料記事ウクライナ侵略の深層

聞き手・今泉奏

 広島で開かれていた主要7カ国首脳会議(G7サミット)が21日、閉幕しました。当初はオンライン参加とされていたウクライナのゼレンスキー大統領は、中東のサウジアラビアでの国際会議に参加後、急きょ来日しました。ゼレンスキー氏が対面にこだわった狙いは何だったのか。筑波大の東野篤子教授(国際関係論)に聞きました。

 ――G7サミット全体の成果をどうみますか。

 非常に高く評価しています。成果文書の「広島ビジョン」では、「ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されない」ことを明確なメッセージとして打ち出しました。

 さらに「核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならない」という、2022年1月3日の「核戦争の防止及び軍拡競争の回避に関する五核兵器国首脳の共同声明」の文言が再確認されました。これも、ロシアによる核の使用のリスクが常につきまとう現在の文脈では適切だったでしょう。

 一方、「核廃絶からはほど遠い」という批判もあります。しかし、核による現状変更を試みかねない国が存在する以上、核の抑止に頼らざるを得ないのが事実です。ロシアによる核の脅しが顕在化した22年2月の侵攻開始の前と後では、全く状況と文脈が異なるのです。ロシアに核を使わせないことに全力を注ぎつつ、核廃絶を究極の目的とすることは全く矛盾しません。

 関連式典では、広島に原爆を落としたアメリカと、落とされた日本だけでなく、第2次世界大戦で戦ったほかのG7諸国がそろって参加したことが意義深いと言えます。

 G7の首脳たちは原爆資料館を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花しました。原爆の被害について国外でも大きく報道されるいい機会になりました。核兵器はなくさなければならない、二度と核兵器の被害を経験してはならないという思いは、G7首脳がそろって原爆資料館を訪問してこそ、共有されたのではないでしょうか。

ゼレンスキー氏の二つの目的

 ――ゼレンスキー大統領はなぜ遠路広島に。

 多国間の議論の場で、各国首脳とひざをつき合わせてぜひとも実現したかったことが二つあったとみます。

 一つは、欧米製戦闘機の供与…

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