引きこもりからルーマニア語の小説家に 語学習得の中で気付いたこと
「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」。気になる表題の自伝を出版した千葉県市川市の済東鉄腸(さいとうてっちょう)さん(30)。初の著書は発売から3カ月で1万部を超えた。自宅で語学と向き合いながら、気づいたこととは。
自称「日本に住みながらルーマニア語で小説や詩を書いている日本人の小説家」。済東さんが文学にのめり込むきっかけはナルシシズムだった。「谷崎潤一郎を読んでる俺、カッケー」。中学3年生のころに「蓼(たで)喰(く)う虫」を読み、「意味の分からなさ」に打ちのめされた。いつしか小説を書きたくなった。
だが、高校卒業後、その情熱は失われる。大学受験に失敗し、第1志望ではない大学のサークルで失恋した。4年間通ったが、就活の文化にもなじめず、卒業後の2015年から実家に引きこもった。本も読めなくなっていた。
辞書で殴られたような衝撃
うつ状態だった済東さんにとって、代わりに出会った映画が救いだった。「俺だって何かやってる」と示したくて、SNSやブログに映画批評を書き続けた。引きこもりはじめてから、これまでにつづった映画ノートは32冊。計2500本以上は見たことになる。
その中に、済東さんをルーマニアにいざなった一つの作品があった。
09年に公開されたルーマニアの監督コルネリウ・ポルンボユによる映画で、少年を逮捕するかどうか悩む警察官が主人公だ。署長に呼び出され、ルーマニア語の辞書を読むことで自身の倫理観について深く考える姿を描いていた。
「辞書で殴られたような衝撃を受けた。この映画を深く理解するためには文化の地盤、つまりルーマニア語を学ばないといけないと思った」
縁もゆかりもないルーマニア。海外へ出たことすらない済東さんは、どのようにルーマニア語を学び、ルーマニアで小説家デビューしたのでしょうか。
それから毎日、ルーマニア語…
- 鳥尾祐太
- 西部報道センター|福岡県警担当
- 専門・関心分野
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