袴田さんの釈放を認めた元裁判長、19日に対談 再審制度の問題点は

村上友里

 57年前に静岡県で起きた「袴田事件」の再審開始(裁判のやり直し)が確定したことを受け、再審制度について考える集会が19日正午~午後2時10分、参議院議員会館(千代田区)である。静岡地裁の裁判長として2014年に再審開始決定を出し、袴田さんの釈放を認めた村山浩昭氏と、元刑事裁判官の水野智幸氏が対談する。

 事件は1966年に発生。みそ製造会社の一家4人を殺害したとして袴田巌さん(87)が逮捕された。袴田さんは公判で一貫して無罪を主張したが、静岡地裁は68年に死刑判決を出し、後に確定した。

 袴田さんが81年に申し立てた再審請求では新たな証拠は開示されなかった。08年の第2次再審請求では、5点の衣類に付着した血液の色がはっきりと分かる写真などが開示され、再審開始を認める14年の静岡地裁決定につながった。検察側の即時抗告などがあり、再審開始が確定したのは23年。最初の再審請求から42年かかった。

裁判官によって証拠開示に差

 冤罪(えんざい)被害者や支援者らでつくる「再審法改正をめざす市民の会」は「袴田さんの再審開始によって、制度の不備が改めて浮き彫りになった」と指摘。再審請求審の長期化や証拠開示などの問題について裁判官の視点を学ぼうと、集会を企画した。

 再審の手続きを定めた刑事訴訟法には、証拠開示をめぐる明確な規定はない。市民の会運営委員で、日本弁護士連合会の再審法改正実現本部本部長代行を務める鴨志田祐美弁護士は「証拠を開示するかしないかは裁判官のやる気次第。裁判官によって開示の差が生じる『再審格差』が起きている」と指摘する。

大崎事件は来月に決定

 今年は、著名な再審事件をめぐる決定が相次ぐ。袴田事件のほか、84年に滋賀県日野町で酒店経営の女性(当時69)が殺害され、店の金庫が奪われた「日野町事件」について、大阪高裁が2月、再審開始を認める決定を出した(検察側が特別抗告)。鹿児島県で79年に男性が死亡した「大崎事件」についても、福岡高裁宮崎支部が6月5日に再審の可否を決定する。

 鴨志田弁護士は「今が再審制度について議論する千載一遇のチャンス。法改正につなげたい」と話す。

 集会には、袴田さんの姉秀子さん(90)や、日野町事件で元被告の「死後再審」を請求している遺族も登壇する。参加無料。先着150人。(村上友里)…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません