本当に面白い本って何だ 名物書店員、「売れる本を売る」からの脱却

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聞き手・田渕紫織

 書店が各地で姿を消している。昨年には、書店ゼロの市区町村が全国の26%に上るという調査結果も出た。ジュンク堂書店で四半世紀のあいだ店長や副店長を務め、反ヘイト本フェアで知られた名物書店員の福嶋聡さんは、店の書棚からはヘイト本を外さないと公言する。そこから見える、デジタル時代の本屋そして本の役割とは。

本屋ないと本当に困る?

 ――全国で書店の閉店が相次ぎます。八重洲ブックセンター本店など大型書店も閉店しましたね。

 「かつて、『まちの本屋』にとって、どんどん進出してくるチェーンの大型書店は『悪役』でした。日本全体でこれだけ本屋が減っていく中、もはや悪役にすらなれなくなったと言えるのかもしれません。ただ、書店がなくなって『寂しい』というのと、なくなって『困る』というのは違う。読者ももう、そんなに困っていないのではないでしょうか」

 ――いえいえ、困ります。

 「たしかに新聞記者さんは困るかもしれないけれども……。本屋に行く習慣が当たり前だった時代は去ったと言えます。著者や編集者も大学の先生も、アマゾンで本を買っていて、書店にはそんなに行かなくなっているのでは。一方、大型書店の相次ぐ閉店の理由として、建物の建て替えという理由がさしあたり前面に出てきていますが、実は本屋自らが招いた事態であるとも思います」

 ――というと?…

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この記事を書いた人
田渕紫織
東京社会部
専門・関心分野
メディア、子ども、災害
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    田渕紫織
    (朝日新聞社会部記者=メディア、子ども)
    2023年5月10日13時50分 投稿
    【視点】

    先日配信した福嶋さんのインタビューを紙面化を機に再編集したバージョンです。 店内を歩きながら、福嶋さんが「僕もいま店に本を並べていても、毎日、『自分が知らなかったこと、こんなにあんねや』と思いますよ」とつぶやいていらっしゃっていたのが

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    藤田さつき
    (朝日新聞オピニオン編集部次長=多様性)
    2023年5月10日21時13分 投稿
    【視点】

    「リアルな書棚では、知らなかったことや予想もしなかったこと、嫌いなことが、いやが応でも入ってくる。それによって見えるものが複雑になる」 「斬新で深い内容を書く無名な書き手の本に出会った時、その本を店の売り場の目立つ場所で紹介するのはとても

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