第5回ノンシャランの岸田首相 この国の危機から目をそらす、その先には

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聞き手・石松恒
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 岸田文雄首相の就任から1年7カ月がたち、政権運営の特徴が明確になりはじめた。その強みと弱みは何か。自民党の歴史や歴代首相に詳しい御厨貴・東大名誉教授に聞いた。

 ――首相としてはどんな特徴がありますか?

 21世紀に入ってからの首相は、小泉純一郎氏をはじめ、大衆受けねらいのしたたかさのある人が多かった。安倍晋三氏もそうだし、民主党政権も野田佳彦氏を除けばそう。

 でも、岸田氏はイデオロギーもない代わりに、そういうしたたかさもない。つまり座っているだけで首相というタイプだ。そのポストに就けば、首相にもなるし、外相にもなる。ある種の図太さがあり、それは地位によって変わらない。それが岸田氏だ。

 ――何か印象的な出来事はありますか?

 私がTBSの政治討論番組「時事放談」の司会を務めていた時、岸田氏に「宏池会はリベラル左派で、平和を重んじていたはずなのに、最近はずいぶん変わったのではないか」と聞いた。彼は非常にけげんそうな顔をして「変わってない。平和主義の理念は変わらないが、状況が変わったんだからしょうがない」と言う。

 これが岸田氏らしい。彼は「…

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この記事を書いた人
石松恒
ネットワーク報道本部兼政治部次長|連載「8がけ社会」担当
専門・関心分野
国内政治、選挙、民主主義、人口減少
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    林尚行
    (朝日新聞GE補佐=政治、経済、政策)
    2023年5月7日22時24分 投稿
    【視点】

    さすが御厨先生だと思いました。「状況追従主義」という言葉は、私の岸田首相像ともマッチします。「スピード感がすごい」「ものを深く考えないから早く結論が出せる」と御厨先生は指摘していますが、流れに乗ると早い、という状況追従主義の特性なんだろうな

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2023年5月8日9時28分 投稿
    【視点】

    「状況追従主義」という御厨さんの表現は言い得て妙です。戦後の日本政治には国際・国内情勢に対してそもそもなし崩し的に臨むところがあるのに加え、新型コロナにウクライナ侵攻と来ればどの国も目先のことに追われるのはやむを得ないでしょう。ただその「状

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