第5回ノンシャランの岸田首相 この国の危機から目をそらす、その先には
聞き手・石松恒
岸田文雄首相の就任から1年7カ月がたち、政権運営の特徴が明確になりはじめた。その強みと弱みは何か。自民党の歴史や歴代首相に詳しい御厨貴・東大名誉教授に聞いた。
――首相としてはどんな特徴がありますか?
21世紀に入ってからの首相は、小泉純一郎氏をはじめ、大衆受けねらいのしたたかさのある人が多かった。安倍晋三氏もそうだし、民主党政権も野田佳彦氏を除けばそう。
でも、岸田氏はイデオロギーもない代わりに、そういうしたたかさもない。つまり座っているだけで首相というタイプだ。そのポストに就けば、首相にもなるし、外相にもなる。ある種の図太さがあり、それは地位によって変わらない。それが岸田氏だ。
――何か印象的な出来事はありますか?
私がTBSの政治討論番組「時事放談」の司会を務めていた時、岸田氏に「宏池会はリベラル左派で、平和を重んじていたはずなのに、最近はずいぶん変わったのではないか」と聞いた。彼は非常にけげんそうな顔をして「変わってない。平和主義の理念は変わらないが、状況が変わったんだからしょうがない」と言う。
これが岸田氏らしい。彼は「…