「鳥取県にも鉄道を」 敷設の歴史を刊行

清野貴幸
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 明治時代鳥取県内で鉄道を求める運動が起こってから山陰線が開通するまでの歴史をまとめたブックレット「鳥取県の鉄道敷設運動」を、県が発刊した。太平洋側との格差是正のために鉄路を求めた住民の熱意やルートをめぐる地域対立など、当時の県内の政治や社会の情勢がうかがえる一冊だ。

 冊子は5章建てで、議会の議事録や鉄道関連の刊行物などの資料を元にした。第1章では県内での鉄道敷設運動が1888(明治21)年に始まったとし、89~90年にかけて他県とを結ぶ六つの私設鉄道の計画があったと紹介。山陰と山陽を連絡する路線への関心が高い一方、山陰を東西に貫く路線への関心が高くないとする当時の運動の特徴を指摘している。

 また、路線選定と軍部との関わりや、選定をめぐる県選出議員の国会での発言を記録で振り返り、京都―出雲今市(現出雲市)間の開通で鳥取県が全国と結ばれるまでの歴史的経緯が分かる。

 コラムも5本盛り込み、住民の反対で鉄道が通らなかったと語り継がれる「鉄道忌避伝説」の検証、鉄道によって大幅に変わった修学旅行などが取り上げられている。

 2006年度から19年度まで続けられた新鳥取県史編纂(へんさん)事業の一環。その過程で得られた成果をテーマごとの小冊子にまとめていて、今回の「鉄道敷設運動」は24冊目のブックレットとなる。著者は県立公文書館職員の石田敏紀さん。

 A5判131ページ、500円(税込み)。県立公文書館や中部と西部の各総合事務所、県内の各書店などで販売。県立公文書館のホームページからも購入できる。(清野貴幸)

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