第3回「反政権」でも「責任ある」 プーチン政権が生んだ虚構と残る後悔
じっと座ってはいられなかった。1週間前、自国の軍隊がウクライナ中部ドニプロの集合住宅を攻撃し、46人が亡くなっていた。
モスクワの会社員アレクサンドルさん(42)は1月21日、車で15分かけて「ウクライナ公園通り」にあるウクライナの詩人の像に向かい、犠牲者を悼んで献花した。近くに警官が立っていたが、構わなかった。
ウクライナへの侵攻を続けるロシア。1年以上経ったが、反戦運動は影を潜め、いまもプーチン大統領は高い支持率を維持している。その大きな要因がメディアと一体で拡散されている政権のプロパガンダだ。多くのロシア人が見る世界は、日本での認識と大きく異なる。ロシアの人たちが住むのはまるで「アナザーワールド」(もう一つの世界)となっている。
像の近くには、ほかにも色とりどりの花が捧げられていた。犠牲者を追悼するこの行為は、市民が自発的に始めたものだ。何度撤去されても、警察に拘束される人が出ても、しばらくの間、花が途切れることはなかった。
プーチン政権のプロパガンダが浸透するロシア社会だが、市民が手向けたこれらの花は、いまも多くの人が、ロシアによるウクライナへの侵攻に疑問を持っていることを示した。
アレクサンドルさんもその一人。これまでも、反政権派指導者ナワリヌイ氏を支持するデモに参加するなど、社会をよりよいものにしたいとの思いを抱き、行動してきた。
「全ロシア人の死を願う気持ち、理解できる」
それだけに侵攻について「自…
- 【視点】
アレクサンドルさんのように考える人は、残念ながらロシアでは少数派です。世論調査では「ウクライナの一般住民の死や破壊について、あなたに道義的な責任があると思いますか」という質問に対して、「完全にある」と答えたのはわずか10%。「ある程度ある」
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