LGBT迫害から立ち上がる シドニーで見た歴史への敬意 李琴峰

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寄稿・李琴峰さん 小説家

り・ことみ 1989年、台湾生まれ。2013年に来日。17年、「独り舞」で群像新人文学賞優秀作。21年、「彼岸花が咲く島」で芥川賞。

 シドニー・ボンダイビーチの崖の上に、崖の形を模した追悼記念碑がある。はめ込まれた一枚の金属板に、こう刻まれている。

〈世界中の全ての都市の過去には深く暗い秘密がある。しかしこの類いの恥ずべき事件があったことは最終的に認められなければならない。そうしてはじめて、過去に苦しんだ人たちは、自身の苦しみがようやく認識されたと感じることができる。シドニーも例外ではない〉

 この崖は1970年代から90年代にかけて、ゲイ男性が相手を求める「ハッテン場」だったのと同時に、「ホモ狩り」の名所でもあった。当時約90人のゲイ男性とトランス(トランスジェンダー)女性が市内各地で殺害された。しかし警察は「事故」や「自殺」で片づけた。当時の警察にとって、ホモ連中は殺されて当たり前で、真剣な捜査に値しなかったのだ。

 崖の近くにある翡翠(ひすい)の波が押し寄せる砂浜は、サーフィン客でにぎわっていた。

マルディ・グラを歩いて

 シドニーのマルディ・グラは…

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