プーチン氏に翻弄された安倍氏 回顧録から浮かぶ稚拙な北方領土交渉

 みなさん、こんにちは。5月はロシアも連休の季節です。ロシア語では「5月の祝日(майские праздники)」といいます。とはいえ、国民の祝日は2日だけ。5月1日のメーデー(ロシアでは「春と労働の日」と呼びます)と、9日の対ナチスドイツ戦勝記念日です。

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 今年はカレンダーの並びが悪く、あまり大型の連休にはなりません。それでも5月8日の月曜日を休日にすることで、5月6日(土)から9日(火)を4連休としています。

 5月8日は暦の上では平日ですが、振り替え休日になっています。どの休日を振り替えているかというと、実は1月8日なのです。この日は新年休暇と日曜日が重なっているため、5月8日に振り替えたというわけです。

 このようにロシアでは、日本とは異なり、振り替え休日が自動的に決まるわけではありません。うまく連休ができるように、自由自在にあちこちに持っていきます。ロシア政府は毎年、だいたい秋までには、翌年の振り替え休日を政令で発表しています。

2島返還へ 拙速な方針転換

 さて今回は、ロシアによるウクライナ侵攻で中断している日ロ平和条約交渉を取り上げます。今年刊行された『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)で、安倍氏がロシアのプーチン大統領と進めた交渉の内幕を明かしています。安倍氏はこの中で、日本が長く国是としてきた四島返還要求を引っ込めて、2島返還路線に転じたことを赤裸々に語っています。

 この歴史的な方針転換につい…

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    駒木明義
    (朝日新聞論説委員=ロシア、国際関係)
    2023年5月9日14時54分 投稿
    【視点】

    先週のニュースレターで配信した記事です。文体がくだけているのはご容赦いただければ幸いです。 ペストセラーになっている『安倍晋三回顧録』から、安倍氏が力をいれた日ロ平和条約交渉部分を取り上げました。今は中断していますが、いずれ将来は、日本と

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