「手話で授業を受けたい」憲法の権利は今 児童が手をたたかれた歴史

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平岡春人

 想像してみてください。

 周りの人が何を話しているのかわからない。何かを伝えようとしても、だれも理解してくれない。もしそれが、毎日通う学校の教室内で起きていることだったら……。

 外国にたった1人で放り出された子の体験談じゃない。日本のろう学校で起きたことなのです。

 幼いころから使い慣れた「日本手話」で授業を受けられず、憲法で保障された「ひとしく教育を受ける権利」を侵害されたとして、北海道札幌聾(ろう)学校(札聾)の小学部の児童と卒業生の2人が北海道を相手取り慰謝料などを求めた訴訟が、札幌地裁で続いている。

通じなかった「15」

 4月に4年生になった原告の男児(10)は、生まれつき耳が聞こえず、日本手話で育った。2年生までの担任教諭は日本手話が堪能だったが、3年時の担任はほとんど使えなかった。クラスの児童は1人だけ。国語や算数、社会の授業は担任と「1対1」で行われていた。

記事の後半では、手話教育が軽視されてきた歴史を振り返ります。そして、全国で唯一、すべてのクラスで日本手話で指導している東京都品川区の明晴学園の取り組みを紹介します。

 昨年5月、算数の授業。担任が計算問題で「では、学校に着いたのは何分後?」と問うと、男児は「15(分)」と正しく答えた。

 担任「十の次は何て……」

 男児「えっと、5」

 男児は答えを十の位と一の位を組み合わせた「日本手話」特有の手の形で示したが、担任は理解できなかった。

 授業を参観していた母親(3…

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