安楽が語る「安楽の772球」 投球数制限への思いとけが予防の提言

有料記事

聞き手・山口裕起

高校野球、アップデートしていますか?

 近年、投球数制限の導入など健康対策に取り組む高校野球界は、子どもや教育を取り巻く環境の変化に十分に対応できているのでしょうか。アップデートできているのでしょうか。

 10年前、選手の健康や故障予防をめぐって大きな議論を呼んだ「安楽の772球」の当事者、プロ野球楽天の安楽智大(ともひろ)投手(26)に聞きました。

賛成と、疑問を感じる部分

 ――高校野球では2020年から1週間500球以内の投球数制限が導入されました。こうしたけが防止策、負担軽減策をどう見ていますか。

 休養日が増えたり、タイブレークによって早く決着がつきやすくなったりすることは、選手の負担が減るので賛成です。

 ただ球数制限については、本当に選手の体を守ることにつながっているのかと、正直なところ疑問を感じています。

 ――なぜでしょう。

 いくら公式戦で制限したとしても、例えば練習で1週間に500球以上投げることもあるのではないでしょうか。

 試合中、救援投手がブルペンで準備をする際の球数は何球までであれば問題ないのでしょうか。

 投球数に制限を設けるなら、そこまで考えなければ、あまり効果はないように思うのです。

 僕の高校時代は、ふだんの練習から球数は気にせずにめちゃめちゃ投げていました。

 ――愛媛・済美の2年生エースとして臨んだ13年の選抜大会では3連投を含め全5試合で計772球と投じました。「安楽の772球」と議論を呼びましたが、仮に当時、1週間500球以内の制限があれば、準々決勝の途中で降板していた計算になります。

 制限がなくてよかった、というのが正直なところです。

 決勝の前夜、上甲正典監督(…

この記事は有料記事です。残り2155文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2023年5月2日15時30分 投稿
    【視点】

    甲子園で772球を投げた安楽智大投手の言葉だからこそ、重い提言です。「当時は、監督に言われれば、『はい』しか言えない状況が多かったですが、今の時代はそんなことはないと思う。しっかり会話しながらやっていってほしい。『痛い』『無理』と選手の方か

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    稲崎航一
    (朝日新聞大阪スポーツ部長)
    2023年5月2日16時37分 投稿
    【視点】

    この「安楽の772球」があった10年前の第85回選抜大会、わたしは新米デスクとして原稿を監修していました。 決勝の安楽投手の記事を、頑張り抜いた準優勝投手の「美談」に仕立てしまった反省が残っています。 恥をさらすようですが、自戒を込

    …続きを読む