茨城・神栖製の再エネ電力、東京・千代田区で利用へ

中村幸基

 多くの風力発電施設がある茨城県神栖市が3月、東京都千代田区と再生可能エネルギー活用に関する連携協定を結んだ。再エネ発電が盛んな神栖で余った電力を、自給が困難な千代田区内の事業者などへ供給。見返りとして電気代の一部が神栖の地域活性化に充てられる。

 再エネの利用を推し進めようにも、発電施設を新設する土地が乏しい首都圏の自治体では、再エネ発電が盛んな地方の余剰電力の買い取りを促進する動きが広がっている。神栖市が同様の協定を結ぶのは昨年7月の横浜市に続いて2例目。

 千代田区は2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロとする「ゼロカーボン」をめざしており、それを達成する手立てとして再エネ電力に着目。ただ、区内の多くをオフィス街が占めており、電力消費などによるCO2排出量が多い上、再エネ発電をしようにも適地がない。

 これに対し神栖市は、風力をはじめ、バイオマス、太陽光など再エネ発電が盛んで、洋上風力発電の計画も進行中だ。再エネ電力の「地産地消」を進めている。

 協定は、神栖側で余った再エネ電力を、千代田側の企業や施設が買い取ることで、自前の再エネを用いたのと同様のCO2抑制効果があったとみなす仕組みに基づく。取引は市と区が直接関わるのではなく、再エネ電力の特定卸供給事業者を仲介役に、取り組みの趣旨に賛同する発電事業者や再エネを買いたい企業が参加する。

 連携に基づく再エネ電力は電気代が割高になるが、消費側にとっては再エネ活用に貢献しているという「お墨付き」を得られる。一方の産地側は料金の上乗せ分を原資に地域活性化に役立てられるメリットがある。発電事業者は参加することで地域貢献しているという評価にもつながる。

 千代田区の樋口高顕区長は締結式で「オフィスからのCO2排出が多い一方で、土地がないので再エネによるカーボンニュートラルを果たそうにも難しい状況です。神栖市とお互いの強みを補完しながらやっていきたい」と話した。神栖市の石田進市長は「平坦(へいたん)な地形で日当たりがよく、一年を通して風が吹く神栖市は再エネの宝庫です。3年後には洋上風力発電もスタートする。千代田区と連携してカーボンニュートラルを進め、経済を回していきたい」と述べた。(中村幸基)…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません