中国共産党系新聞の幹部、スパイ罪で起訴 日本外交官と昼食中に拘束

北京=高田正幸
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 共産党系の中国紙、光明日報で論説部副主任を務めていた董郁玉氏(61)が3月、スパイ罪で中国検察当局から起訴されたことが関係者の話でわかった。董氏は昨年2月、北京で在中国日本大使館員との昼食中に拘束され、取り調べを受けていたという。日本を含む外国政府と自国民の接触を強く警戒し、引き締めを図る中国安全当局の動きが顕著になっている。

 関係者によると、董氏は昨年2月21日、北京のレストランで国家安全局に拘束された。その後6カ月間、軟禁状態で取り調べられる「居住監視」処分を経て、起訴されたという。

 董氏は弁護士とは接見したが、家族との面会は今も認められていないという。

 董氏は改革派の論客として知られ、米ニューヨーク・タイムズ紙など外国の報道機関に寄稿した経験もある。日米のジャーナリストや研究者、外交官と親交が深く、米ハーバード大の特別研究員のほか、日本の慶応大や北海道大に客員として招かれて勤務したこともあるという。

 関係者によると、董氏は取り調べの際、2010年代前半に日本を訪問した時の行動を詳細に書き起こすよう求められ、日本大使館側との交流についても強い関心を示されたという。

 一方、董氏の容疑について当局が示した証拠には、いかなるスパイ組織との接触や金銭の授受なども示されていないといい、関係者は「当局は日本大使館などをスパイ組織のように扱っている」と指摘。家族も「外国人との接触は正常な仕事の一部で、疑わしいことはない」と訴えているという。

 在北京の日本大使館は取材に「事柄の性質上、お答えすることは控えます。なお、我が国の在外公館がいわゆるスパイ活動に関与しているといった事実は一切ありません」と回答した。

 中国外務省の毛寧副報道局長は25日の定例会見で董氏の起訴について問われ、「問題を把握していない」と答えた。

 中国当局は昨年2月に董氏を拘束した際、ともに会食していた日本大使館員も一時拘束した。日本政府は「通常の外交活動」だったとし、外交官の地位などを定めたウィーン条約に明白に違反しているとして中国側に抗議した。

 中国の習近平(シーチンピン)指導部は、反スパイ法を施行するなど「国家安全」を名目に外国人や外国と接点のある中国人への取り締まりを強化し、スパイの定義を拡大する反スパイ法の改定に向けた審議も大詰めを迎えている。

 日本人や在日中国人が拘束される事件も相次ぎ、今年3月には製薬大手アステラス製薬の現地法人幹部が反スパイ法違反の疑いなどで拘束された。(北京=高田正幸)

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