お金の教育 新設する公的機関、「増やす」だけでなく利用者本位に

有料記事多事奏論

編集委員・中川透

記者コラム「多事奏論」 編集委員・中川透

 投資や資産形成について相談できる相手はいますか。子どもにお金とのつきあい方をどう教えますか。私たちのこんな疑問や課題の解決を支える公的機関「金融経済教育推進機構」が来年生まれる。新組織をつくる法案が今の国会で審議される予定だ。

 機構は学校や企業で講座を開いたり、学習用の教材をつくったりする。顧客の立場から資産形成の相談などに乗ってくれるアドバイザーを、個人が見つけやすくするしくみも設ける。金融機関に相談すると、手数料の高い商品販売など、営業本位の対応になりがちなためだ。政府が昨年にまとめた資産所得倍増計画のとりくみの一つで、「貯蓄から投資」の動きを後押しする。

 新組織の成否は、省庁のタテ割りを超えていかに利用者の視点に立った運営ができるか、に尽きると思う。設立を主導する金融庁は貯蓄や投資にかかわるが、年金は厚生労働省、住宅ローンは国土交通省、クレジットカードは経済産業省、トラブル相談は消費者庁など様々な関係省庁がある。私たちにはひとつながりのお金の話も、情報発信はバラバラで利用者にわかりにくい。

 その典型が、金融庁の少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」と厚労省の個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の関係。資産形成や老後の備えを考える人がまず悩むのは、両制度の違いと使い分けだ。各省庁のホームページにはそれぞれのくわしい解説があるが、個人がもっとも知りたいのは自分にとって最適な制度の使いこなし方。横串を刺す情報が大事になる。

 ニーサは来年から利用限度額…

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