なぜ乳児を抱いて議場に入ったのか 議会を去る市議が投げかけたもの

有料記事これでいいのか?ニッポンの議会

堀越理菜 大貫聡子

 統一地方選が終わった。熊本県議会の女性議員は過去最多の5人になり、熊本市議会も女性議員は改選前より1人増えて6人になった。一方で、子連れで議場に入り、社会に議論を投げかけた女性議員が議会を去る。(堀越理菜、大貫聡子)

 熊本市議を2期務めた緒方夕佳さん(47)は、今回の統一地方選には立候補しなかった。

 2017年に第2子の長男を出産。生後7カ月だった長男を抱いて本会議に出席したことで、議長から厳重注意を受けた。

 市議会の会議規則に乳児の同伴を禁じる定めはなかったが、議長らに議場から出るように言われた。

 乳児は議場に入ることができない「傍聴人」とみなされたためで、その後、議員以外の入場を原則認めないと会議規則が変更された。

 当時は会議規則に産休期間の明示もなかった。妊娠中も仕事を続け、出産直前の議会では、市が提案した子ども医療費に関する施策に懸念を抱き、夜遅くまで議会に残って検討した。だが、そうした妊娠中の無理がたたり、出産後も腰痛など体調不良が続いた。子育てとの両立の中で身体のケアも十分にできなかった。

男女同じスタートラインではない

 市議会の改選前の女性議員は5人。その中で、子育て中の生の声を届けているのは自分だけだと感じ、3期目を目指すことも考えたが、地盤や看板もない無所属議員が厳しい選挙戦を戦い抜き、議員活動ができる体調ではない。告示直前まで迷ったが、立候補しないことを決めた。

 緒方さんが出産後、長男を抱…

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    小室淑恵
    (株式会社ワーク・ライフバランス社長)
    2023年4月26日10時50分 投稿
    【視点】

    「責任ある立場なんだから、家庭より仕事を優先しろ」ビジネスの場でも、女性活躍と言いながら、女性管理職にはこのように求める。それとそっくりだ。  選挙では始発から終電まで街頭に立ち、当選後は平日は議会が深夜に及び、休日も無く地元のお祭りで挨

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