色とりどりの金沢和傘、いまや国内に1店舗 創業127年老舗の思い
漆黒や鮮やかな赤の下地に、絵の具や金箔(きんぱく)で描かれた花鳥風月――金沢市中心部を流れる犀川近くの古民家の軒先に、色とりどりの和傘がぶら下がる。創業127年の「松田和傘店」。いまや国内唯一となった「金沢和傘」の専門店だというのだ。
「弁当忘れても、傘忘れるな」。雨が多く、天気が移り気な北陸に伝わる言葉だ。2年前、社会人になり、金沢が初任地となった記者(26)も突然の雨には何度も泣かされた。
金沢和傘は、その北陸の気候に適するようにつくられた優れものだという。特徴は「天井」と呼ばれる傘のてっぺんにある。通常の和傘は2~3重の和紙が貼り付けられるが、金沢和傘は固くて分厚い和紙を使い、それを4重貼りにする。
傘の裏側の小骨には小さな穴が開いており、そこに「千鳥がけ」という丈夫な色とりどりの糸を通し、立体状の網目がつくられる。見た目だけではなく、水分量の多い北陸の雪に耐えるための施しだという。
金沢和傘にはおよそ30~40の工程がある。傘の骨を柄に取り付けては和紙を貼り付ける。防水のための油を引き、3~7日間つるして干す。防虫、防腐効果がある柿渋をかけ、千鳥がけを経て、最後にてっぺんに「トンボ」と呼ばれるカバーをつけて完成となる。
店では、3代目の松田重樹さん(64)と3人の弟子がこの工程に取り組む。1本を作り上げるのに2カ月ほどかかる。通常の雨傘は1本約7万円からで、金箔をふんだんに使った1千万円ほどするものもある。
最盛期は金沢に118店舗
金沢和傘の歴史は、江戸時代…