現代を生きる「大山康晴全集」 藤井聡太、山根ことみ、藤井猛が語る

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北野新太
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 昭和の大名人として将棋界に君臨した大山康晴十五世名人(1923~92)は今年、生誕100年を迎えた。現代の礎となる功績を数多く残したが、最晩年の棋書「大山康晴全集」(91年)は特筆すべき傑作。今も愛棋家から支持を集め、後世の棋士に影響を与え続けている。

 史上最多の名人18期など空前の大記録を残したが、大山は過去の偉人ではない。世を去って31年が経過した現在も、残した棋譜を通して盤上を生き続ける不滅の巨人である。

 最晩年に出版した「大山康晴全集」はアマチュアの聖典となっている棋書。自戦記や観戦記、関連エッセー、公式戦全棋譜などが全3巻に完全収録された百科事典のような大著で、箱入り、布張り、箔(はく)押しの豪華装丁が施され、価格4万円も発売時に話題となった。絶版になり入手困難な時期もあったが、熱烈な要望を受け、2019年に受注生産で復刊した。

 妙技を堪能する愛棋家によって読み継がれた名作である一方で、棋士を志す者、棋士として頂点を目指す者にとっては最良の教材となってきた。

藤井聡太竜王が礎とした「第1巻 五冠王まで」

 昭和10~30年代の棋譜を収めた「第1巻 五冠王まで」を重点的に学んだのは、現在六冠の藤井竜王である。14歳までの棋士養成機関「奨励会」在籍期間に取り組み、今を生きる礎とした。「当時の自分には技術がなかったのですごく勉強になりました。大山先生は駒の配置が非常に巧みで(自陣を)堅くするよりもバランスの良い陣形で相手の攻めに対応する。今から見ていても先見性を感じるところはあります」。堅さよりバランスという思想は、現代将棋を席巻するAI(人工知能)の理念でもある。

藤井竜王が「今でも全く色あせない」という「大山康晴全集」。山根ことみ女流二段はかつてリュックに入れて放課後の相棒とし、藤井猛九段は「いい手が乗り移るのかも」とまで話します。

 「大山先生の将棋は今でも全…

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