原爆資料館、G7首脳にどこまで見せる?「米の立場危うくできない」

有料記事岸田政権

鬼原民幸 ワシントン=清宮涼 下司佳代子

 広島で5月19~21日に開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、各国首脳が広島平和記念資料館を訪れる方向で調整が進んでいる。「被爆の実相」を伝えるため、岸田文雄首相が訪問を望んできた。政府内では、首相自ら案内する案も浮上する。しかし、どういう展示を見てもらうか、調整は容易ではない。

 資料館は原爆投下から10年後の1955年に開館した。94年に東館が増築され、本館と東館の2棟が並び立つ今の形になった。本館は2019年にリニューアル。東館から入り、渡り廊下で本館に向かうのが見学ルートだ。

被爆の実相は「本館」に

 「被爆の実相」は主に本館に展示されている。傷だらけの少女、我が子の名前を呼び続ける母親、真っ黒になって身を寄せ合う子どもたち。被爆直後の写真一枚一枚が「8月6日の惨状」を物語る。原爆で溶けた鉄の塊や、ぼろぼろの被爆者の衣服のほか、亡くなった被爆者の遺影や遺品、残された家族がしたためた手記も並ぶ。

 首相は昨年8月、核不拡散条約(NPT)再検討会議に出席し、「核兵器のない世界」に向けた行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表した。5本柱で構成され、各国の指導者らによる被爆地訪問の促進を通じ、被爆の実相に対する正確な認識を世界に広げていくことも柱の一つに盛り込まれている。今回もその一環。資料館をG7首脳がそろって訪問するのは初めてだ。

 資料館にはこれまで、多くの外国の首脳や要人が訪れてきた。資料館によると、外国の首脳も通常、一般の見学者と同じ順路で案内するという。

 ただ、G7首脳が本館も含め、一般の見学者と同じような順路で回るのか、どういう展示を見るのかはっきりしない。外務省関係者は「どのような展示を見たのか、最後まで明らかにできないだろう」と言う。なぜか。

 米国では、原爆投下によって…

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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2023年4月20日9時15分 投稿
    【視点】

    外交には一般からは想像しえない駆け引きや配慮が必要なのは理解できますが、G7首脳が原爆資料館を訪問する機会に、本館を見ないという選択肢があることにかなり違和感があります。本館に存在する心が押しつぶされそうになるほど残酷な原爆の現実を直視する

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2023年4月20日11時22分 投稿
    【視点】

    確かに繊細な問題ではあるが、原爆投下についての米国世論は特に若い世代で確実に変化している。未来よりは過去の日米関係に囚われた、日本政府の過剰な忖度ではないか。 戦後70年にあたる2015年に行われたマーケティングリサーチ会社YouGo

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