ウクライナの視察団、宮城の農地を回る 「震災復興の経験学びたい」

福岡龍一郎
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 ウクライナの政府視察団が18日、東日本大震災で被災した仙台市沿岸部の農地や「せんだい3・11メモリアル交流館」(若林区)を視察した。ウクライナはロシアによる侵攻からの復興政策をつくることを目指していて、津波被災地の復興の経験と教訓が役立つ可能性があるという。

 独立行政法人国際協力機構(JICA)が、ウクライナの農業政策食料省の次官ら5人を宮城県に招待した。JICAによると、ウクライナは小麦やトウモロコシなど世界でも有数の農作物輸出国だが、ロシアの侵攻により灌漑(かんがい)施設や穀物貯蓄庫が被害を受け、経済的損失は約282億ドルに上ると推定されている。

 宮城の沿岸部でも津波で灌漑施設が壊れ、農地にはがれきが山積した。そこから復興した経験が、ウクライナの今後に生かせると招待が決まったという。

 18日には、視察団の5人が交流館を訪れ、仙台市の担当者から被災当時の状況について説明を受けた。津波による塩害で当初は沿岸部では10年近く農業ができない可能性があるとされていたが、排水施設の改良で塩を取り除き、3年後には8割近くの農地が回復したという。市の担当者は「安全な住まいと農業など産業の復興があれば、次の一歩を踏み出せる」と話した。

 がれきが広がる荒れ地の写真を見たヴィタリー・ゴロヴニャ次官は「ロシア軍が撤退した地域とすごく似ている。経験を学び、ぜひウクライナで生かしたい」と話した。ただ、軍が撤退した後の農地には地雷が埋められているなど、津波被害とは異なる課題が残っているという。

 その後、視察団は震災遺構の荒浜小学校(若林区)や被災した排水機場などを見て回った。19~20日には石巻市東松島市、山元町の農業法人や農地を視察するという。(福岡龍一郎)

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