岸田首相襲撃の容疑者、立候補できず「差別」 昨年参院選前に国提訴

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 衆院補選の応援演説のため和歌山市内を訪れた岸田文雄首相の近くに爆発物が投げ込まれた事件で、威力業務妨害の容疑で逮捕、送検された兵庫県川西市の無職、木村隆二容疑者(24)が昨年6月、年齢などを理由に参院選に立候補できないのは不当だとして、国に損害賠償を求める訴訟を起こしていたことがわかった。「同じ大人なのに、社会経験に基づく思慮が十分でないことを理由とした差別だ」と訴えていた。和歌山県警も木村容疑者が裁判を起こしていたことを把握しており、黙秘を続ける容疑者の動機との関連を調べている。

 訴訟記録によると、木村容疑者は昨年6月、国に10万円の賠償を求めて提訴。同7月の参院選に立候補しようとしたが、公職選挙法が定める参院の被選挙権(30歳以上)の年齢に達していないうえ、参院選選挙区の場合に必要な供託金300万円を用意できないために実現しなかったとして、精神的苦痛を受けたと主張していた。

 公選法の被選挙権の規定については「根拠なく被選挙権を侵害している」、供託金については「財産や収入で差別してはならないと定めた憲法44条に反する」と主張。「被選挙権年齢の成年年齢への引き下げ、供託金制度の廃止を訴訟を通じて求める」としていた。

 神戸地裁は昨年11月、公選法の規定には合理性があるとして請求を棄却した。

 木村容疑者は、地裁判決を不服として大阪高裁に控訴し、地裁判決を「国の主張のコピペだ」と批判。被選挙権の規定について「立候補が抑制されるから、従って投票行為が抑制される」とし「国民の信任を得ずとも統一教会などの組織票で当選し、利益を不当に独占し、国民に損害を与え続けている」との持論を展開していた。

 今年3月下旬に第1回口頭弁論があり、即日結審。5月下旬に控訴審判決が言い渡される予定。

 木村容疑者は昨年9月24日、自民系の川西市議(当時)が地元の公民館で開いた市政報告会に参加した。参加者名簿には、容疑者の住所や名前が残っていた。

 報告会に出席していた同党の大串正樹衆院議員に、木村容疑者とみられる若い男性が、被選挙権年齢について「憲法に違反しているのではないか」などと不満を示し、法改正を求めていたこともわかった。大串氏が18日午前、国会内で朝日新聞などの取材に応じた。「20分間くらい話した」としている。大串氏は、木村容疑者の自宅がある川西市を含む衆院兵庫6区を地盤とし、現在は内閣府副大臣を務めている。

 前市議も報告会の終了後、木村容疑者とみられる男性から「市議の報酬はどれくらいですか」などの質問を受けたと話している。

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2023年4月18日13時5分 投稿
    【視点】

    とても興味深い報道です。被選挙権での年齢制限に対する木村容疑者の不満が今回の犯行の原因かどうかはまだわかりませんし、もしそうだったとしても今回の犯行が許される理由には全くなりません。それでも、政治家になることに関心を示していた若者が、政治家

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