進化するChatGPT、大学のつきあい方は? 情報研所長に聞く

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聞き手・上野創

 問いに対して、なめらかに答えてくれる対話型AI(人工知能)の「ChatGPT(チャットGPT)」が話題をさらっています。大学などでどう活用したらいいのか、課題はなにか。AIの専門家で、4月に国立情報学研究所の所長に就いた黒橋禎夫・京都大特定教授(56)は「批判的思考を持ちながら、知的作業のパートナーとして活用を」と語ります。

――チャットGPTが爆発的に使われるようになった。この状況を予想していたか。

 昨年11月にチャットGPTが登場し、3月にはGPT4が公開されると大騒ぎになった。ここまでになるとは思っていなかった。この春、所長となった私に「追い風だね」と言ってくれる人もいるが、暴風という感じだ。

――問題点を指摘する人もいる。専門家としてどう見ているか。

 チャットGPTは、文章を自然に作り出してくれる。「関西弁にして」「中学生が書いた風に」「要約を」と指示すればその通りに変えてくれる。でも、どうしてそこまでできるのか、細かいところまでは分からない。

 本来は、それ自体を研究対象にするべきで、きちっと把握できないのは世界として問題だ。いま、研究できるのは、技術や情報を持ち、開発を進める米国のオープンAIやグーグル、中国の検索大手の百度(バイドゥ)など、大手企業に限られている。

 チャットGPTのような生成型AIは人類にとって非常にインパクトが大きいだけにクローズドの世界はふさわしくない。人類にとって非常によくないことが「密室」で起きる可能性がある。あくまで例えであり懸念ということだが、人の考えや思想を反映する対話の履歴が不適切に活用されたり、うそではないものの、人や集団の分断につながりかねない偏った情報が流れやすくなったりすることなどだ。

 だからこそ技術をオープンにし、世界中の人が調べることで、何が起こりそうか、ではどうしたらいいか、考えられるようにするべきだろう。

――チャットGPTは急激に進化して賢くなっている。限界はあるのか。今後の見通しは。

 限界は見えていないというか…

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この記事を書いた人
上野創
横浜総局
専門・関心分野
教育、不登校、病児教育、がん、神奈川県、横浜市
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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2023年4月28日16時56分 投稿
    【視点】

    チャットGPTについては、私が勤める大学でも議論が始まっています。基本としては禁止するのではなく、その利用の仕方を知恵を出し合って考えようとしているところです。教育現場としてどのように対応してゆくかについて、日本中の学校が頭を悩ましていると

    …続きを読む
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    増谷文生
    (朝日新聞論説委員=教育)
    2023年4月19日19時1分 投稿
    【視点】

    黒橋所長は、AI(人工知能)研究における日本の第一人者の1人です。その専門家でさえ、チャットGPTをはじめとする生成AIが、どのような進化を見せていくのか予想がつかないと聞き、驚きました。  インタビューでは、さまざまなポイントについて話

    …続きを読む