鈍川温泉、にぎわい構想 カフェやキャンプ場を

神谷毅
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 有数の温泉地として知られた愛媛県今治市の鈍川(にぶかわ)温泉が、活性化への構想をまとめた。カフェやキャンプ場などを整備してにぎわいを取り戻すことを狙っている。

 鈍川温泉組合によると、年間約3万8千人が宿泊した1999年をピークに、その後は減少を続け、最近では新型コロナウイルス流行が響き、1万人ほどまで落ち込んだ。温泉の質や食事への評価は高いものの、施設の老朽化が進んでいる点が、観光客の足が遠のいた原因とみられる。

 一方で、皮肉にも知る人ぞ知る温泉地としての評価が高まっている。旅行関連の調査機関によると、21年には「穴場の温泉」として17位に入った。

 そこで、豊かな自然を体験できたり、ゆっくりと過ごせたりする環境を整備すれば活性化につながるとして、組合や県、市、伊予銀行、地域住民らが2022年10月からまちづくりについて議論を重ね、いよぎん地域経済研究センター(松山市)が中心となって活性化構想をまとめた。

 構想には、鈍川温泉のある玉川地区を五つのエリアに分け、温泉めぐりや食を楽しめるようにする計画を盛り込んだ。温泉があるエリアでは、遊歩道や照明を整備して歩いて巡りやすくするほか、今後10年かけてカフェやキャンプ場を建設する考えだという。

 温泉組合の中川修一郎組合長は、議論を通して鈍川温泉の強みと弱みを洗い出したと言い、「この先5年10年と続く魅力的なまちづくりのスタート」と話す。組合は今後、今治市と協議会をつくって構想の実現を目指す。

 県内では大洲市が3月、国際的な認証団体から「世界の持続可能な観光地100選」の文化・伝統保存部門で世界1位に選ばれた。観光振興のモデルになると、県内の他の観光地も注目するが、鈍川温泉を含めてそれぞれがどう独自色を出すのかが課題となる。

 金融機関の関係者は「国などの補助金に期待するだけでなく、多額の資金を調達できるかがカギを握る」と話している。(神谷毅)

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