奈良・大安寺の宝物殿、増改築終え再オープン 耐震、空調万全に

今井邦彦 米田千佐子

 「がん封じの寺」として知られる奈良市の大安寺(真言宗)で進められていた宝物殿の増改築工事が終わり、13日、リニューアルオープンした。約2億円をかけて免震装置や温湿度を調整する空調施設、ガイダンス機能を持った前室などを備えた施設に生まれ変わった。

 大安寺は飛鳥時代に舒明天皇が建立した百済(くだら)大寺が前身。平城京遷都当時は国内最大の寺院だったが、中世以降に衰退した。戦後は復興が進み、鉄筋コンクリート造りの宝物殿は1963年に完成。天平時代(8世紀中ごろ)の仏像7体(すべて重要文化財)が収蔵されてきたが、築後60年たって老朽化が進み、大地震対策やバリアフリー化が課題になっていた。

 寺がクラウドファンディングで増改築費の一部を公募したところ、目標額の1千万円に対して約1300万円が集まった。12日の落慶法要で河野良文貫主(住職)は「多くの人の協力があって落慶することができた。天平の仏に込められた、当時の人の祈り、願いを感じていただければ」と話した。

 リニューアルした宝物殿には、現在の約25倍の広さを誇った奈良時代の大安寺を紹介するガイダンスコーナーや、周辺の発掘調査で出土した瓦、風鐸(ふうたく)などの展示コーナーが新設された。旧宝物殿は天平仏7体の展示室になり、免震装置つきの展示台が導入された。

 本堂・宝物殿の拝観料は4月1日から改定され、大人600円、高校生以下300円(秘仏の特別開扉期間は200円増)。今井邦彦

 最盛期の大安寺を散歩したり、空中遊泳したり――。新宝物殿のガイダンスコーナーでは、コンピューターグラフィックス(CG)でかつての大安寺を復元した仕掛けを体験できる。

 往時の大安寺には、南大門や、いずれも高さ約70メートルの七重塔の東塔、西塔などがあった。実際の復元は難しいため、奈良文化財研究所(奈良市)が監修し、往時の姿をCGで復元。一足早く昨年3月に嘶堂(いななきどう)で公開を始め、今回、新宝物殿で見ることができるようにした。

 コントローラーを操作して「歩行」と「飛行」の各モードに切り替え、近くに寄ったり遠くから引いて見たり、視点を変えられる。空中から塔の細部を見ることもできる。「だるま」のイラストに近づくと建物の説明や豆知識が現れる。中心となった河野裕韶(ゆうしょう)副住職(35)は「隅々まで楽しんでほしい」と話す。(米田千佐子)…

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