北朝鮮ミサイル「いつまでおびえなければならないのか」 北海道混乱

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 13日朝、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものが落下するとみられると、全国瞬時警報システムJアラート)が出された北海道。しかし、政府は30分足らずで「その可能性はなくなった」と情報を訂正。道庁は情報収集に追われ、道内に被害がないことを確認した。人口200万都市の札幌市圏でも通勤・通学時間帯に鉄道など交通機関が運行を見合わせ、混乱が起きた。沿岸部の住民は「いつまでおびえなければならないのか」と憤った。

 道庁では13日午前10時から緊急の連絡会議を開催し、道内や周辺海域の船舶などに被害がないことが報告された。鈴木直道知事は「道民にはJアラートの発出に不安を感じていることと思うが、冷静に対応していただくようお願いする」と呼びかけた。

 札幌市交通局によると、平日は約60万人が乗車する市営地下鉄は、13日午前7時56分から25分間、全線で運行を停止した。路面電車もほぼ同時間帯に停止した。

 地下鉄の車両はすべて駅で止まり、ドアも開放した。通勤途中だった会社員女性(42)は「閉じ込められた状態ではなかったのでよかった。改めて地下鉄は安全なんだと思った。今回は情報が訂正されたが、政府は今後もこうした緊急通報をしてくれた方がありがたい」。

 札幌市中央区に住む40代女性は、市中心部の大通にある職場へ向かうところだった。午前8時10分ごろ、市営地下鉄西18丁目駅に着くと、改札口前にはたくさんの人が中に入れずに待っていた。2・5キロほど離れた職場へ歩いて行くことにした。「中心部へ歩いている人が普段より多く見られた」

 同市清田区の30代女性はJアラートが鳴った時、通勤のためバスに乗っていた。「乗客のスマホが一斉に鳴り、バスの無線で『すぐにドアを開けるように』と指示があった」。運転手はマイクで「降りたい方は降りてください」と呼びかけたが、40人ほどの乗客のうち降りたのは2人だけ。「30分ほど停止していた。その後、各停留所でたくさん人が乗ってきて、パンパンになった」と話した。

 JR北海道は13日午前7時55分ごろ、北海道新幹線を含む道内全線区の運転を一時見合わせた。走行中の列車はすべて駅や駅間で運転を止めた。その後、在来線は午前8時17分ごろ、北海道新幹線は同19分ごろから順次運転を再開した。午前10時40分現在、在来線や新幹線で最大35分程度の遅れが発生し、28本が運休している。

 北海道エアポートによると、新千歳空港ではJアラートの発出を受けて2本の滑走路の運用を一時停止したが、午前8時29分ごろに再開した。一部の航空便に遅れが出たという。

 津軽海峡に臨む函館市。漁協根崎支所によると、この日朝の道南の海はしけていて、漁に出ている船はほとんどなかった。

 函館市新湊町の漁師、吉田智さん(69)は自宅周辺にいた。「海岸にいる人はすぐに避難を」と漁協から無線が入り、家の中に入った。「出漁していなくてよかった。海上では北へ逃げればいいのか、南へ逃げればいいのか、隠れようもないから」とほっとした様子だった。政府の情報訂正については「もっと正確を期してほしい。こんなことを繰り返していたら、だれも避難しなくなる」と注文をつけた。

 北海道根室市沖の太平洋では、200カイリ水域内で行うサケ・マス流し網漁の漁船が操業中だった。

 ミサイルの情報を受け、根室漁協は花咲港から出漁していた漁船2隻に船舶電話をかけ、「何かあったら連絡を」と注意を呼びかけた。

 根室漁協の相川泰人・専務理事は「陸上と違って海の上では逃げ場所はなく、気をつけてというほかなかった」と話した。

 日本海に浮かぶ離島、奥尻町。約1500の全世帯に入っている防災無線の受信機で、一斉にJアラートが鳴った。町民の一人は「ミサイルにおびえるようなことがいつまで続くのか。いい加減にしてほしい」と憤った。

 町役場では、出勤早々の職員たちが慌ただしく情報収集にあたった。地域政策課の満島章課長は「幸い被害情報などはなく、町民からの問い合わせもなかった。結果的に何もなくて良かったが、情報は正確であってほしい」と話した。

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